2007モルドバ・ウクライナ旅行記(その11)
◆沿ドニエストルの秘密について考えてみる
『幻のソ連が生きる国〜沿ドニエストル共和国』の首都ティラスポールにやって来たにゃおんちゃん。予想外のほのぼのぶりに困惑し、ソ連の残り香を必死に探す。
1991年にはモルドバ軍との軍事衝突もあり多数の死者を出しているのだが、首都のこの街は戦場になっていないので戦争の傷跡もまるで無し。戦場となったのは、ベンデールやティラスポールから70〜80kmほど北にあるDubăsari(デュバッサリ)近郊らしい。
さらにその北にある小さな村にはこの地域に駐留していたロシア軍の武器庫がある。ソ連が崩壊した際にハンガリー等から撤退してきた旧ソ連軍がこの武器庫に大量の武器弾薬を残していき、この国がそれを売りさばいて外貨を稼いでいるという噂がある。いや、噂というより限りなく黒に近いグレーで、これを問題視したOSCE(欧州安全保障協力機構)はキシナウに事務所を構えてこの国を監視している。
しかし、旧ソ連時代の余剰&旧式兵器を売却して小銭を稼いでいるのは、この国だけではない。ロシアはもちろんのこと、ウクライナやベラルーシも同じことをしてアメリカを激怒させたことがある。
沿ドニエストル共和国の首脳陣に言わせれば、「そんな噂は、ロシアと我が国を敵視する西欧諸国、そして我が国と対立しているモルドバが流したプロパガンダだ」であり、一部にはOSCEが目くじら立てて怒るほど大規模な武器の売買が行われているわけではないと言う人もいる。

ティラスポール市内で見た「FCシェリフ」の場外チケット売り場。
うーむ、どっちを信じればいいんだ?このきれいな街並みと平穏に暮らす人々の姿を見てしまうと、武器密輸で外貨を稼ぐ悪党国家には見えないし(一般的に、そういうことをして稼いだ金は庶民に還元されない)、しかしこんな国とも呼べない小国がそれなりに金を稼いでいるには何か秘密があるはず。
沿ドニエストル政府の発表によれば、この国の一人当たりのGDPは990USDで、モルドバとほぼ同等。数字だけを見ればスーダンやカメルーンよりも酷い。しかし、どう見てもこの国がスーダンやカメルーンより貧しいわけがない。もちろん、元共産主義国なので貧富の差が比較的大きくないとか、ソ連時代に最低限のインフラが整備されているからとか、ソ連時代の遺産で食いつないでいる部分もあるのだろうが。
莫大なアメリカの援助で水ぶくれしたかつての南ベトナムじゃあるまいし、ロシアが湯水のごとく援助をしているとも思えない。仮に大規模な援助があったとしても、ソ連クォリティの国でそれが庶民に還元されるはずがない。この国の独立によってモルドバは国内の工業力の35%を失ったというから、この地域はモルドバの中でも工業が発展してる地域なのは間違いない。しかし、まともに貿易もできないのに、作った工業製品をどうやって輸出してる?非承認国家という曖昧な立場を利用してウクライナ経由で散々密輸をして、ウクライナ政府を激怒させたという話は聞いたことがあるが・・・その密輸もウクライナが経済封鎖をしたので以前のように大っぴらにはできないはず。
なのに、どうしてこの街はこんなに穏やかなの?この国の国民は何をやって金を稼いでいるのだ?もしかして、アルメニア人やモルドバ人のように、ロシアやルーマニアに出稼ぎに行っているのか?
アントネスクがいればもっと色々なことを知ることができたのに・・・。いなくなった奴のことをグチグチ言っても仕方ない。
◆ティラスポールを行く
ティラスポールの街を歩くが、にゃおんちゃんの困惑は増す一方。
高層アパートは、大規模な改築を施したウクライナのものほどではないが、窓や壁にはきちんと手入れされた形跡がある。緑も豊かだし、公園では子供たちが楽しそうに遊んでいる。にゃおんちゃんが話しかけても逃げないし、カメラを向けると照れながらもにっこりと微笑む。
子どもというのはどんな環境でも元気だったりしますが、この子達のこの目の輝きは何なんでしょうか。庭には洗濯物が干してあったりなんかして、ほんとにほのぼの。うーむ・・・。

公園で遊んでいた子ども達。ヒネくれてなくて、マジで可愛かった。
とりあえず10USDばかり両替して、約70PRB(トランスニストリア・ルーブル)をゲット。1PRB=14〜15JPYといったところか。小額紙幣に描かれている人物は18世紀に露土戦争などで活躍したロシア軍の大元帥アレクサンドル・スヴォーロフ。他にもウクライナの国民的詩人タラス・シェフチェンコや、ロシア帝国の女帝エカテリーナ2世が描かれている紙幣もあるらしいが見当たらなかった。えーと・・・レーニンとかカリーニンが描かれている紙幣は無いんですか?

やたら小さいし、すぐにクシャクシャになるし、まるで「子ども銀行」のお金みたいです。
補助通貨としてコインもあり、こちらはには「CCCP」と書かれているという噂だったが、どうやらそれは古いコインのみらしく、にゃおんちゃんが入手したものには書かれていなかった。残念。
散々歩き回って探した末に、ソ連チックなものをやっと見つけた。描かれている紋章はトランスニストリアの国章、「16」という数字は多分建国から16年という意味。下に書かれているロシア語は「沿ドニエストル共和国は存在する!」って意味。
散々歩いても見つけた香ばしいものはこれだけ。レーニン像はどこー?
さらに歩き続けると、陸上競技場と大きな公園を発見。こちらのスタジアムは「FCティラスポール」のホーム・スタジアム。凄いね、こんな田舎なのにモルドバ1部リーグに所属するチームが二つもある。もちろんプロではないが。
人がいなくて寂しいが、公園にはゴミひとつ落ちておらず、芝生もきちんと刈られている。噴水もあっていい感じ。キシナウの公園は水が無い噴水ばっかりだったからな・・・。
◆「ヤバい国で圧政に苦しむ可哀想な人達」はどこ?
公園のど真ん中に軍人の像が立っている。多分、第二次世界大戦でこの街をドイツ軍から解放した将軍なのだろう。この手の像はどこの街にもある。しかし、この将軍の名前が分からない。どこにも名前が書かれていない。うーむ・・・。
像の前で首を傾げていると、子どもを連れた若い女性がやって来た。幸いなことに彼女は英語を話せた。しかも上手い。将軍の名前を教えてもらったが、5分で忘れた。
「私はこの街の大学で英語を学んでいるのよ」
ティラスポール唯一の総合大学『T.G.シェフチェンコ大学』か。どおりで上手いわけだ。
この子は君の娘か?
「いいえ、この子は私の姪っ子よ。この子と一緒に公園に散歩に来たの」
あー(;´Д`)、失礼しました。確かに子持ちには見えないわな。若くて美人だし、何気にやたら露出度が高くセクシーな服を着てる。いくら暑いからってあなた・・・。
あれ?結婚指輪してる。
「ええ、私は結婚してるのよ」
彼女は学生だが既に結婚していて、夫はキシナウで仕事をしているという。車で1時間程度だし、途中に国境があるとはいえ行き来は簡単だし、通勤していても不思議ではない。
キシナウに引っ越そうとは思わないの?
「私はこの街が好きなのよ。キシナウと違って、穏やかで綺麗な街でしょ?」
ああ、ほんとにそのとおりで驚いたよ。でも、政治的に色々と問題があるけど・・・。
「私たちはモルドバでもウクライナでも自由に行けるわ。問題ないわよ。それにこの国には旅行者もたくさん来るのよ」
そうだ。さすがに非承認国家のパスポートでは外国に行けないので、国民の多くはモルドバやロシアの市民権を取得してパスポートを所有している。
偽ソ連といえども、かつてのソ連のように人やモノの行き来を鉄のカーテンで遮断しているわけではない。ということは、圧政など敷けばたちまち国民は逃げ出すわけで、やはりこの国はそんなにメチャクチャな政治をしているわけではないのかもしれない。一応複数政党制で議会は野党が多数派だし。その点では、ベラルーシよりマシだなぁ。
「よく知ってるわね。私もモルドバのパスポート持ってるのよ。あなたはどこから来たの?」
日本ですよ。
「モルドバを見に来たの?それで、この街は気に入った?」
うーん・・・気に入ったとは言えないが・・・。でもねぇ、正直言って驚いた。まともで。
やっぱり自分の目で見ないと分からないもんだね。いや、でもこれで田舎に行ったら最低だったりして。(;´д`)
我々が話をしている間、彼女が連れていた子どもは乗り物に乗って遊んでいた。うーむ、楽しそうだぞ。彼女にしろこの子にしろ、小奇麗だし穏やかな表情をしている。やっぱりどう見ても「ヤバい国で圧政に苦しむ可哀想な人」には見えない。
15分ほど立ち話をした後、彼女は姪っ子を連れて帰って行った。

この子が姪っ子。人懐っこくて、めちゃめちゃ可愛かった。将来は美人に・・・。
《つづく》
『幻のソ連が生きる国〜沿ドニエストル共和国』の首都ティラスポールにやって来たにゃおんちゃん。予想外のほのぼのぶりに困惑し、ソ連の残り香を必死に探す。
1991年にはモルドバ軍との軍事衝突もあり多数の死者を出しているのだが、首都のこの街は戦場になっていないので戦争の傷跡もまるで無し。戦場となったのは、ベンデールやティラスポールから70〜80kmほど北にあるDubăsari(デュバッサリ)近郊らしい。
さらにその北にある小さな村にはこの地域に駐留していたロシア軍の武器庫がある。ソ連が崩壊した際にハンガリー等から撤退してきた旧ソ連軍がこの武器庫に大量の武器弾薬を残していき、この国がそれを売りさばいて外貨を稼いでいるという噂がある。いや、噂というより限りなく黒に近いグレーで、これを問題視したOSCE(欧州安全保障協力機構)はキシナウに事務所を構えてこの国を監視している。
しかし、旧ソ連時代の余剰&旧式兵器を売却して小銭を稼いでいるのは、この国だけではない。ロシアはもちろんのこと、ウクライナやベラルーシも同じことをしてアメリカを激怒させたことがある。
沿ドニエストル共和国の首脳陣に言わせれば、「そんな噂は、ロシアと我が国を敵視する西欧諸国、そして我が国と対立しているモルドバが流したプロパガンダだ」であり、一部にはOSCEが目くじら立てて怒るほど大規模な武器の売買が行われているわけではないと言う人もいる。

ティラスポール市内で見た「FCシェリフ」の場外チケット売り場。
うーむ、どっちを信じればいいんだ?このきれいな街並みと平穏に暮らす人々の姿を見てしまうと、武器密輸で外貨を稼ぐ悪党国家には見えないし(一般的に、そういうことをして稼いだ金は庶民に還元されない)、しかしこんな国とも呼べない小国がそれなりに金を稼いでいるには何か秘密があるはず。
沿ドニエストル政府の発表によれば、この国の一人当たりのGDPは990USDで、モルドバとほぼ同等。数字だけを見ればスーダンやカメルーンよりも酷い。しかし、どう見てもこの国がスーダンやカメルーンより貧しいわけがない。もちろん、元共産主義国なので貧富の差が比較的大きくないとか、ソ連時代に最低限のインフラが整備されているからとか、ソ連時代の遺産で食いつないでいる部分もあるのだろうが。
莫大なアメリカの援助で水ぶくれしたかつての南ベトナムじゃあるまいし、ロシアが湯水のごとく援助をしているとも思えない。仮に大規模な援助があったとしても、ソ連クォリティの国でそれが庶民に還元されるはずがない。この国の独立によってモルドバは国内の工業力の35%を失ったというから、この地域はモルドバの中でも工業が発展してる地域なのは間違いない。しかし、まともに貿易もできないのに、作った工業製品をどうやって輸出してる?非承認国家という曖昧な立場を利用してウクライナ経由で散々密輸をして、ウクライナ政府を激怒させたという話は聞いたことがあるが・・・その密輸もウクライナが経済封鎖をしたので以前のように大っぴらにはできないはず。
なのに、どうしてこの街はこんなに穏やかなの?この国の国民は何をやって金を稼いでいるのだ?もしかして、アルメニア人やモルドバ人のように、ロシアやルーマニアに出稼ぎに行っているのか?
アントネスクがいればもっと色々なことを知ることができたのに・・・。いなくなった奴のことをグチグチ言っても仕方ない。
◆ティラスポールを行く
ティラスポールの街を歩くが、にゃおんちゃんの困惑は増す一方。
高層アパートは、大規模な改築を施したウクライナのものほどではないが、窓や壁にはきちんと手入れされた形跡がある。緑も豊かだし、公園では子供たちが楽しそうに遊んでいる。にゃおんちゃんが話しかけても逃げないし、カメラを向けると照れながらもにっこりと微笑む。
子どもというのはどんな環境でも元気だったりしますが、この子達のこの目の輝きは何なんでしょうか。庭には洗濯物が干してあったりなんかして、ほんとにほのぼの。うーむ・・・。

公園で遊んでいた子ども達。ヒネくれてなくて、マジで可愛かった。
とりあえず10USDばかり両替して、約70PRB(トランスニストリア・ルーブル)をゲット。1PRB=14〜15JPYといったところか。小額紙幣に描かれている人物は18世紀に露土戦争などで活躍したロシア軍の大元帥アレクサンドル・スヴォーロフ。他にもウクライナの国民的詩人タラス・シェフチェンコや、ロシア帝国の女帝エカテリーナ2世が描かれている紙幣もあるらしいが見当たらなかった。えーと・・・レーニンとかカリーニンが描かれている紙幣は無いんですか?

やたら小さいし、すぐにクシャクシャになるし、まるで「子ども銀行」のお金みたいです。
補助通貨としてコインもあり、こちらはには「CCCP」と書かれているという噂だったが、どうやらそれは古いコインのみらしく、にゃおんちゃんが入手したものには書かれていなかった。残念。
散々歩き回って探した末に、ソ連チックなものをやっと見つけた。描かれている紋章はトランスニストリアの国章、「16」という数字は多分建国から16年という意味。下に書かれているロシア語は「沿ドニエストル共和国は存在する!」って意味。散々歩いても見つけた香ばしいものはこれだけ。レーニン像はどこー?
さらに歩き続けると、陸上競技場と大きな公園を発見。こちらのスタジアムは「FCティラスポール」のホーム・スタジアム。凄いね、こんな田舎なのにモルドバ1部リーグに所属するチームが二つもある。もちろんプロではないが。
人がいなくて寂しいが、公園にはゴミひとつ落ちておらず、芝生もきちんと刈られている。噴水もあっていい感じ。キシナウの公園は水が無い噴水ばっかりだったからな・・・。
◆「ヤバい国で圧政に苦しむ可哀想な人達」はどこ?
公園のど真ん中に軍人の像が立っている。多分、第二次世界大戦でこの街をドイツ軍から解放した将軍なのだろう。この手の像はどこの街にもある。しかし、この将軍の名前が分からない。どこにも名前が書かれていない。うーむ・・・。
像の前で首を傾げていると、子どもを連れた若い女性がやって来た。幸いなことに彼女は英語を話せた。しかも上手い。将軍の名前を教えてもらったが、5分で忘れた。
「私はこの街の大学で英語を学んでいるのよ」
ティラスポール唯一の総合大学『T.G.シェフチェンコ大学』か。どおりで上手いわけだ。
この子は君の娘か?
「いいえ、この子は私の姪っ子よ。この子と一緒に公園に散歩に来たの」
あー(;´Д`)、失礼しました。確かに子持ちには見えないわな。若くて美人だし、何気にやたら露出度が高くセクシーな服を着てる。いくら暑いからってあなた・・・。
あれ?結婚指輪してる。
「ええ、私は結婚してるのよ」
彼女は学生だが既に結婚していて、夫はキシナウで仕事をしているという。車で1時間程度だし、途中に国境があるとはいえ行き来は簡単だし、通勤していても不思議ではない。
キシナウに引っ越そうとは思わないの?
「私はこの街が好きなのよ。キシナウと違って、穏やかで綺麗な街でしょ?」
ああ、ほんとにそのとおりで驚いたよ。でも、政治的に色々と問題があるけど・・・。
「私たちはモルドバでもウクライナでも自由に行けるわ。問題ないわよ。それにこの国には旅行者もたくさん来るのよ」
そうだ。さすがに非承認国家のパスポートでは外国に行けないので、国民の多くはモルドバやロシアの市民権を取得してパスポートを所有している。
偽ソ連といえども、かつてのソ連のように人やモノの行き来を鉄のカーテンで遮断しているわけではない。ということは、圧政など敷けばたちまち国民は逃げ出すわけで、やはりこの国はそんなにメチャクチャな政治をしているわけではないのかもしれない。一応複数政党制で議会は野党が多数派だし。その点では、ベラルーシよりマシだなぁ。
「よく知ってるわね。私もモルドバのパスポート持ってるのよ。あなたはどこから来たの?」
日本ですよ。
「モルドバを見に来たの?それで、この街は気に入った?」
うーん・・・気に入ったとは言えないが・・・。でもねぇ、正直言って驚いた。まともで。
やっぱり自分の目で見ないと分からないもんだね。いや、でもこれで田舎に行ったら最低だったりして。(;´д`)
我々が話をしている間、彼女が連れていた子どもは乗り物に乗って遊んでいた。うーむ、楽しそうだぞ。彼女にしろこの子にしろ、小奇麗だし穏やかな表情をしている。やっぱりどう見ても「ヤバい国で圧政に苦しむ可哀想な人」には見えない。
15分ほど立ち話をした後、彼女は姪っ子を連れて帰って行った。

この子が姪っ子。人懐っこくて、めちゃめちゃ可愛かった。将来は美人に・・・。
《つづく》



