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2008.02.18 (Mon)

コソボ独立の謎

セルビア共和国からの独立を主張してきたコソボ自治州が、2月17日に独立を宣言しました。


コソボ 独立を宣言

【プリシュティナ(セルビア南部コソボ自治州)=黒沢潤】
コソボ自治州議会は17日午後(日本時間同日深夜)、セルビアからの独立宣言を採択し、国旗も決定した。米英仏独などの欧米主要国は速やかに国家承認する方針だが、セルビア政府は強く反発している。

サチ首相は議会で「人々に選ばれた指導部はコソボが独立した統治国家であることを宣言する」と独立宣言を読み上げた。この後、議員全員が挙手し宣言を採択した。議会では近く、憲法も採択される予定で、アルバニア系住民が約9割を占めるコソボにおけるセルビア系住民(約8%)の保護や、隣国アルバニアなど他国との合併を放棄する-などの文言が盛り込まれる。

英仏独や米国は18日にもコソボの国家承認を行う予定。欧州連合(EU)は、コソボを暫定統治してきた国連に代わる司法行政グループを派遣し、業務を6月をめどに引き継ぐ方針だ。世界銀行やEUは6月に復興支援会議を開催する。

セルビアのコシュトニツァ首相は17日、「コソボはニセモノの国家を作ろうとしている」と強調、独立を認めない考えを示した。セルビアは、コソボに制裁を科すことをすでに表明しており、コソボを承認した国の大使を召還するなどの外交措置もとる。

ロシアもセルビアと連携し、国連で独立無効を主張するとみられる。

2008年2月18日 産経新聞



「この日に独立宣言をするだろう」という情報は前から報道されていましたので、別にいまさら驚きませんし、セルビア人の若者が暴れてるという話も「( ´_ゝ`)フーン」ってなもんで。

そりゃセルビア人は怒るでしょうよ。コソボはセルビア王国発祥の地で大昔からセルビア人の土地だったのに、現在コソボに住んでるアルバニア系住民は後からやって来てあそこに住み着いて、「ヽ(`Д´)ノ独立する!」って言ってるんですから。

でも、アルバニア系住民はユーゴスラビア紛争の際に非暴力による独立運動を提唱していたのに、ミロシェビッチ政権はコソボの自治権を取り上げたうえに暴力でそれに応えた訳で、アルバニア系住民は「こんな奴らと一緒に暮らせない。何が何でも独立してやる!」と思うでしょうよ。


と、お互いに言い分はあるのですが、にゃおんちゃんが不思議に思ったことは、EUが「コソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」なんて寝ぼけたこと言ってる点です。
案の定、国内に分離独立運動を抱えるスペイン、ルーマニア、ギリシャ、キプロスなどはコソボ独立に反対ないし慎重な姿勢を取っています。そりゃそうでしょ、こんなもの安易に独立を認めたら自国の分離独立運動に飛び火しますがな。

南キプロスがEUに加盟する際の住民投票もそうでしたが、EUは何でこんなに無責任な対応をするのでしょうか?1999年にはNATO軍がセルビアを空爆してまで両者の争いを止めさせようとしているのに、どうしてここでこんなにやる気の無い対応?
もちろん放置もできないし、かといって加盟国の足並みを揃えることができないEUの辛さは分かりますがね。


コソボ政府は「100ヶ国近くから独立承認を貰えそうだ」と豪語していますが、国連安保理の常任理事国であるロシアが「コソボ独立は認めない」と明言しているので、コソボは独立しても国連には加盟できません。

それから、セルビアは1月20日に大統領選を控えていたのに、コソボが「独立するぞ、独立するぞ」とセルビアを煽っていたのも謎です。結果として親欧米派の現職ボリス・タディッチが再選されたから良かったものの、もし極右のトミスラブ・ニコリッチが当選していたらどうなっていたことやら。
わざわざ選挙の争点にするような真似をしてどうするんですか?コソボのアルバニア系住民は戦争したいんですか?EUだって「セルビアを刺激するような真似は止めなさい」と言うべきだったのでは?


謎はまだあります。アメリカやEUは明らかにコソボに肩入れしてます。
もし本当に平和的な解決を望むのなら、コソボの一部をセルビアに割譲するとかセルビア側が妥協できるような落とし所を探して、コソボ側にもそれを飲ませるべきじゃないですか?あんた達、コソボの言い分は全部丸呑みして、セルビアだけに譲歩を強いるんですか?
先日の「香ばしき国々:沿ドニエストル共和国編」において『かつての連邦構成共和国のみが独立国となる権利を持ち、その中にある州や自治共和国レベルの地域は独立できない 』というルールがあると書きましたが、今まで頑としてこのルールに反する国を認めなかったのにコソボだけ特別扱いする理由は何なのでしょう?

欧米諸国はコソボの味方をするふりをして殺し合いを誘発しようとしているのでしょうか?
仮に戦争になりコソボが敗北したとしても、コソボは今さらセルビアには戻れませんから、泥沼の内戦に陥ることは目に見えています。「ならば独立を承認しよう」ということなのでしょうか?

しかし、それが他の地域に飛び火することは考えていないのですか?
アブハジアや南オセチア、トランスニストリア、ソマリランドだって同じですよ?彼らだって今さらグルジアやモルドバやソマリアには戻れないと考えているはずです。
グルジアやモルドバでまた殺し合いが始まったら、どうするつもりなのでしょうか?


コソボ問題はにゃおんちゃんが不勉強なせいもあるのでしょうが、どうにも腑に落ちない点が多すぎます。

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19:29  |  旧ソ連諸国  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

2006.07.27 (Thu)

黒猫がウクライナのガス問題について語る⑤ - ユーシェンコの嘘っぱちを暴く

さて、話をウクライナに戻します。ひとまず、この件については今回で終了となります。
これが終わったら台湾旅行の話でも書こうと思います。

◆謎の会社ロスウクルエネルゴの正体
1,000立方メートル当たり95$で新たな売買契約を締結したロシアとウクライナ。両国のガス事業は、ロシアは「ガスプロム」、ウクライナは「ナフトガス」という国営ガス会社が国内市場をほぼ独占している。単純に考えれば、ガスプロムがガスを売却し、ナフトガスがその代金を支払うという構図になるはずだ。
ところが、ロシアやウクライナに強い報道期間やインターネットサイトの記事を読むと、この新契約は非常に怪しい内容になっていることが報じられている。両国が新たに交わした契約はガスプロムとナフトガスの2社による単純な売買契約ではなく、その間に「ロスウクルエネルゴ(RusUkrEnergo)」「ガストランジット(Gaztransit)」という二つの合弁会社が挟まっている。

前述のとおり、ウクライナが消費するガスはロシア産のみならずトルクメニスタン産やカザフスタン産も含まれている。ウクライナはこのガスの支払いに加えて、自国を通過するパイプラインに関して通行料を受け取る権利がある。ロスウクルエネルゴは、これらの複雑な決済を行うための会社と言われている。
理由としてはもっともなのだが、このロスウクルエネルゴを調べると、その正体はスイスで法人登記されているペーパーカンパニーだという。代金決済を行う会社であれば、事務所がひとつと数名の職員、あとはコンピューターでもあれば仕事はできそうだ。確かに大規模な資本や設備は必要ないが、それにしても実態がペーパーカンパニーとは怪しすぎる。


ロスウクルエネルゴの出資者(株主)はさらに怪しい。50%はガスプロム傘下のガスプロム・パンクが保有している。ガスプロムはロシア国営のガス会社なので、大元を辿ると株主はロシア政府ということになる。したがって、こちらはそれほど問題あるまい。ヤバすぎるのが残りの半分。
残りの50%はオーストリアの大手金融グループ、ライファイセン銀行系列の信託投資会社が保有している。そして、この信託の保有者は「ウクライナの複数の投資家」であること以外明らかにされていない。どこの誰が出資しているのか分からない会社がロシアとウクライナという国家間のガス取引の間に挟まっているのだ。怪しさ1,000%である。

後に、ロスウクルエネルゴを担当する監査法人の発表によって、この投資家はドミトリー・フィルタシとイワン・フルシンという2名の人物であることが判明した。フィルタシはキプロスの投資会社ハイロック・ホールディングスの役員を務めているが、この会社の実質的オーナーはウクライナ・マフィアの大物セミヨン・モギレヴィッチで、FBIからマークされているといういわく付きの会社。
また、彼は「ユーラル・トランス・ガス(Eural Trans Gas)」という会社の幹部でもある。このユーラル・トランス・ガスも怪しさ大爆発の会社で、ロスウクルエネルゴが設立される前はこの会社がロシア-ウクライナ-トルクメニスタン間の契約に挟まって代金決済業務を行っていた。この会社はハンガリーで法人登記されているが、実態はペーパーカンパニーに近く、前ウクライナ大統領レオニード・クチマやトルクメニスタンのニヤゾフ大統領及びその側近連中がガス代金をピンハネして私腹肥やしに利用していた会社だ。

一方のフルシンはオデッサ銀行のオーナーであり、ハイロック・ホールディングスのウクライナ支社長も務めている。
テロリストやマフィアへの資金流入を警戒するアメリカはユーラル・トランス・ガスやロスウクルエネルゴが関わる闇の資金に目をつけ、司法省が調査に動き出しているという。
ほーら怪しくなってきた。


◆ウクライナ側の出資者の背後には?
ロスウクルエネルゴはロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンなどから平均で1,000立方メートル当たり90$で購入したガスを、ナフトガスへ95$で売却することになっている。この差額がロスウクルエネルゴの収益となり、それは株主であるガスプロムと謎のウクライナ人投資家の儲けに化けることになる。
ウクライナは年間730億立方メートルのガスを輸入する予定なので、単純計算で考えてもロスウクルエネルゴは3億6,500万$(約420億円)という莫大な金を得ることになる。

ロスウクルエネルゴにウクライナ側から出資しているのはこの二人ということになっているが、少しばかり金を持っているからというだけで国家間の契約が絡む企業への出資など簡単にできるわけがない。多分、この二人は名目上の出資者で、背後には黒幕がいるに違いない。そして、それは多分どこかでユーシェンコと繋がっているのだろう。
フィルタシとつながりがあると言われているユーシェンコ大統領の元第一補佐官アレクサンドル・トレチヤコフや、ナフトガスの元社長ユーリ・ボイコあたりが限りなく怪しい。


昨年、このロスウクルエネルゴがウクライナ当局によって捜査されていた際、その捜査を主導していたのが首相のユリア・ティモシェンコだ。しかしこの捜査は昨年夏に突然ユーシェンコ大統領によって打ち切られ、警察のトップは更迭された。そしてその翌月にはティモシェンコも首相を解任されてしまった。
ティモシェンコは「ガス・プリンセス」の異名を持つガス事業で巨万の富を築いた実業家(というかマフィア)。ロスウクルエネルゴ周辺に漂うガス臭い腐敗臭に気づかないわけがない。以前からの政策面に関する対立に加え、ユーシェンコが手にしたガス利権に食い込もうとしたことから、返り討ちに遭って首相を更迭されてしまったのだろう。

もう一方のガストランジットはロスウクルエネルゴ以上に怪しい会社で、正体が殆ど分からない。ガストランジットはロスウクルエネルゴ、ガスプロム、ナフトガスの三社によって設立されたロシア=ウクライナの合弁会社で、ロスウクルエネルゴとナフトガスの間に挟まっている。
こんなところで会社をひとつ余計に通して、一体何の意味があるのだろうか。これも多分誰かのピンハネ用の会社に違いない。


ちなみに、ウクライナはガスのみならずあらゆる分野でこのような経済マフィアが蔓延っており、日本人が思うような「民主主義を推進して欧州の一員となることを目指している国」などではない。クチマだろうがユーシェンコだろうがティモシェンコだろうがヤヌコビッチだろうが、ウクライナの政治家は全員真っ黒な経済マフィアだ。マフィアが国を運営しているといってもいい。にゃおんちゃんが、ウクライナを「マフィアに乗っ取られたクサレ国家」と呼ぶ理由はここにある。

多分、ウクライナの政治家はこれからもEUとロシアの間をフラフラしながら利権を貪り続けるだろう。この国ではテクノクラートやブルジョワが育つことはあっても、まともな中産階級が育つことなど多分無い。

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18:17  |  旧ソ連諸国  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2006.07.19 (Wed)

黒猫がウクライナのガス問題について語る④ - 周辺国の思惑を探る

なんだか、取り留めの無い文章になってきました。
すっかりウクライナのガス事情から脱線してしまいましたねぇ。
次回でロシアとウクライナが締結した新契約の裏事情に触れて、このテーマについてはおしまいにしたいと思います。ウクライナのガスについては、いずれユリア・ティモシェンコ(ウクライナの首相)の秘密について書く際にでも再び取り上げたいと思います。


◆では、どこからガスを買う?
アメリカが中南米に反米政権ができることを決して許さなかったように(現在はベネズエラやボリビアなどに香ばしい反米政権があるが)、ロシアも旧ソ連諸国に反露政権ができることを許さない。
元々反ロシア感情が強いうえにソ連末期の弱体化に乗じて離反しEUやNATOに加盟してしまったバルト三国についてはどうすることもできなかったが、前庭たるウクライナやモルドバ、勝手口たるカフカス諸国(アルメニア、グルジア、アゼルバイジャン)に関しては、「ロシアの影響圏からの離脱は許さない」という姿勢を明確にしている

一方、ロシアの影響下から逃れたいグルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバは「GUAM」という連合を作ってロシアに対抗しようとしている。
ただし、露骨に反ロシアを掲げるグルジア、ウクライナ、モルドバの3ヶ国に対し、アゼルバイジャンの立場は少し異なる。旧ソ連有数の油田であるバクー油田を有するアゼルバイジャンは反ロシアではないが、ロシアのみならず欧米諸国とも広く取引することを望んでいるため、ロシアを牽制する意味でこの連合に加盟している。また、自国で産出される石油やガスをグルジア、ウクライナ、モルドバへ供給することで、自国の影響力拡大を狙っていると思われる。


このように、ロシアはおめおめと欧州に吸収合併されるつもりなど毛頭無く、子分の国(CIS諸国)が自分から離反しようとした際には容赦ない仕打ちを行っている。このようなプーチン政権のやり方には欧米でも批判が多いのだが、かといってEU諸国がロシア産天然ガスに頼らず生きていくことは殆ど不可能に等しい

ロシア以外で天然ガスを大量に埋蔵している国はイランとトルクメニスタン。だが、イランは核開発疑惑で欧米と対立を強めており、EU諸国がロシアから買わずにイランから買うという選択肢は有り得ない。トルクメニスタンにしても、「中央アジアの金正日」の異名を持つサパルムラト・ニヤゾフ大統領による独裁が続く問題国家であり、また内陸国なのでロシアかイランを経由しなければガスを輸出することができない。
現在トルクメニスタンからカスピ海を抜けてアゼルバイジャン~グルジア~トルコへと向かうパイプライン(トランスカスピ・パイプライン)が建設されており、2011年頃に供用が可能となる目処が立ってきた。ロシア領内を通過せずにガスを輸出する算段が整って、EU諸国がホッとしたのも束の間、トルクメニスタンはこれを見越して早速ガスの値上げを通告してきた。トルクメニスタンが要求するとおりの価格で契約することとなった場合、ウクライナのガス価格はさらに上昇し1,000立方メートル当たり130$前後となる。


◆対照的なアメリカとドイツ
ガスに関してキナ臭い話が続く中、EU諸国の中でも特にプーチン政権と太いパイプを持つドイツが、ロシア産天然ガスの安定供給確保に向けて動き出した。プーチンはドイツの財界やシュレーダー前首相と古くから親交があり、近年の独露関係は非常に良好な状態が続いている。
ウクライナとロシアの喧嘩によってばっちりを食ったドイツは、ロシアから安定した天然ガスの供給を受けるため、バルト海を経由させて両国を直接つなぐパイプラインの建設を予定している。間を飛ばされる格好になるバルト三国やポーランドが反対しているが、首相がメルケルに変わってもドイツが考えを改める気配は無い。

一方、同盟国である西欧諸国の命綱をロシアに握られることを嫌うアメリカは、周辺国に次々と民主革命という名の政変を仕掛けてロシアの影響圏から離脱させる一方で、前述のトランスカスピ・パイプラインやアゼルバイジャンからグルジア経由でトルコのジェイハンへ向かう石油パイプライン(Baku-Tbilisi-Ceyhan:BTCパイプライン)の建設を推進するなど、ロシアに干渉されずにカフカス地方や中央アジアから石油や天然ガスを運び出す仕組みを作ろうとしている。
当事国であるアゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベギスタン等の資源保有国はいずれも独裁者が君臨しているが、この独裁者どもは決して親ロシア一辺倒ではない。自分の好き勝手にできる政治体制さえ維持できれば、自国で産出される天然資源を高く買ってくれれば、仲良くする相手がロシアだろうがアメリカだろうが構わないと考えている。

それでも、ガスや石油に関しては売り手市場なので、とにかくロシアは強気だ。
昨今の原油高やガス需要の高まりによってロシアのエネルギー関連会社はどこも莫大な収益を上げているが、中でもガスプロムの成長ぶりは凄まじい。ガスプロムの株式の時価総額は2,170億$(約250兆円)にまで上昇し、BP(2,371億$)やロイヤル・ダッチ・シェル(2,229億$)といった石油メジャーに匹敵する存在となった。

《その5につづく》

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23:28  |  旧ソ連諸国  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2006.07.17 (Mon)

黒猫がウクライナのガス問題について語る③ - ロシアに逆らうとこうなります

実は、ロシアがエネルギーをネタに周辺国を締め上げるのは今回が初めてではない。ウクライナと並んで親米反露色の強いグルジアやモルドバはもっと悲惨な状況になっている。
それでは、ロシアに逆らった国がどのような目に遭ったか見てみよう。

◆グルジアの場合
黒海とカスピ海に挟まれた山岳地帯カフカス地方の真ん中に位置するグルジアは、2003年のバラ革命によってシュワルナゼ政権が崩壊し、露骨に親米反露を掲げるサーカシュヴィリ政権が誕生した。

カフカス地方位置図

この地域に親米政権が誕生して米軍が駐留するようなことになれば、ロシアやイランは自国の安全保障を背後から脅かされることになる。カフカス地方は石油がとれるアゼルバイジャンを除けば山ばかりで役立たずの土地だが、地政学的にはとても重要な場所なのだ。

グルジア西部のアブハジア地方や北部の南オセチア地方は、地方政府やゲリラがグルジアからの分離独立を掲げて武装蜂起し、グルジア政府の統治が及ばない実質的な独立国となっている。そして、ロシアはグルジアの力を削ぐためにこれらの国をこっそりと支援している。一方のグルジアも北部のパンキシ渓谷がチェチェン・ゲリラの巣窟となっているのに、見て見ぬふりをして彼らがロシア軍を攻撃するのを放置している。
そんなわけで、ロシアとグルジアはもの凄く仲が悪い。

これがガスプーチンだ!にも関わらず、グルジアはガスのみならず電気までロシアに依存しており、プーチンの嫌がらせでガスや電気の供給を止められたことがある。ロシア政府は「反ロシアのテロリストによって送電線を爆破された」と言い訳したが、チェチェン・ゲリラをはじめとして、あの地域でロシアと戦う武装勢力が反ロシアを掲げるグルジアを攻撃する理由が無い。
ロシアから数々の嫌がらせを受けているサーカシュヴィリ政権だが威勢は良く、一向に反ロシアの矛先を納める気配は無い。

余談になるが、怒ったグルジア市民が首都トリビシのロシア大使館の前で抗議デモを行っているのを映像を数年前に見たことがあるのだが、その際に帝政ロシア末期に暗躍した怪僧ラスプーチンにひっかけて「ガスプーチン」と書いてあるプラカードを掲げている奴を発見して大爆笑した。


◆モルドバの場合
モルドバはウクライナとルーマニアの間にひっそりと存在する、欧州で最も貧しい国のひとつだ。旧ソ連諸国の中ではタジキスタンと並んで最も影が薄い。

モルドバ位置図現在のモルドバは2001年の総選挙で大勝した共産党が政権を担当しており政治的には反ロシアではないのだが、最大の援助国であるアメリカや事実上アメリカ政府の影響下にあるIMFの意向を無視できず、反ロシア色を強めている。
また、国土の中央を流れるドニエストル川東岸(トランスニストリア)の住民が「沿ドニエストル共和国」を建国して分離独立を掲げ、ロシアがこれをこっそり支援している。トランスニストリアには現在もロシア軍が駐留しており、色々な理由をつけては未だに撤退せず居座っている。
そんなわけで、モルドバもロシアと仲が悪い。

モルドバは、以前の価格の2倍に相当する1,000立方メートル当たり160$で天然ガスの購入を迫られた。国際市場価格よりは安いとはいえ、ウクライナと違ってモルドバは吹けば飛ぶような小国なので、こんな値上げに耐えられるわけがない。
また、モルドバでガス事業を独占しているモルドバガスは、ロシアの国営ガス会社ガスプロムに50%、敵対している沿ドニエストル共和国政府に13%の株式を保有されていることから、圧倒的に不利な立場での交渉を余儀なくされた。

逆ギレしたモルドバ政府は「それなら我が国を通過するパイプラインの通行料を値上げする」と対抗したが、そのせいでモルドバ経由でロシアからガス供給を受けているルーマニアやブルガリアがとばっちりを食らった。
ルーマニアやブルガリアはモルドバよりはマシとはいえ、EU加盟を果たしたハンガリーやチェコ、スロベニアなどの近隣諸国と比べると、まだまだ国内産業が脆弱な国だ。それにも関わらず、1,000立方メートル当たり270$と非常に割高な契約を結ぶ羽目となってしまった。


またガスとは関係無いが、モルドバとグルジアはロシアのWTO加盟に反対の声明を出したため、その報復措置としてロシアへのワインの輸出差し止めを食らった。ロシア政府は「モルドバ産・グルジア産のワインから、人体に有害な重金属が検出されたため」としているが、西欧諸国は今までどおり輸入しているわけで、嫌がらせ以外の何物でもない。
モルドバやグルジアにとってワインの輸出は重要な外貨獲得手段のひとつで、一番のお得意さんはロシアだった。当然、両国はロシアに猛抗議するが全く相手にされず、悲鳴をあげる羽目になった。在庫がダブついたところを狙い済まして両国のワインを安く買い叩いた中国は、「これで我が国は当分の間ワインには困らない」と高笑いしているという。

ガスにしろワインにしろ、自国の置かれている立場を忘れてロシアに楯突くと、こういう酷い目に遭うことになる。というか、モルドバもグルジアも余計なことを言って無駄にロシアを怒らせるからだ。


◆バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の場合
バルト三国はベラルーシやウクライナと違い、スラブ人の国でもなければ東方正教の国でもない。エストニア人はフィン=ウゴール語族でフィンランド人とは兄弟のようなもの。ラトビア人はバルト語族でプロテスタント、リトアニア人はバルト語族でカソリックと、ロシア人とは全然違う。

バルト三国位置図バルト三国は帝政ロシアに支配されていた時代が長いが、第一次世界大戦後には短いながらも独立していた時期もあり、リトアニアに至っては中世にはポーランドと連合王国を組んで広大な領土を有していた時期もある。
それがモロトフ=リッベントロプ協定(第二次世界大戦直前にナチス・ドイツとソ連が結んだ密約)によって無理やりソ連に併合されたうえに、ドイツへの通牒の疑いをかけられて大量の市民がシベリアへ流されているのだから、バルト三国のロシア嫌いは半端ではない。中でも、国内にロシア系住民が殆どいないリトアニアは過激極まりなく、事あるごとにロシアに喧嘩を売っている。

バルト三国はCISではなくNATOに加盟しており、軍事的に見ればロシアにとっては敵国同然の存在。歴史的経緯のみならず、現在も国境線の確定作業などでロシアはバルト三国と対立している。

バルト三国でもロシア産天然ガスの値上げによってインフレが進み、2006年に予定されていたユーロ導入が延期となってしまった。ただし、バルト諸国のインフレは原油高や好景気による所得水準の上昇による部分も大きく、またEU加盟国であり経済成長は相変わらず順調なのでグルジアやモルドバのような悲惨なことにはなっていない。


前回、「ロシアはそんなに悪か?」と述べたが、こうして見ると確かにロシアのやり方はエゲツない。まあ、エグいとはおもうが、それでもやはり悪とは思わない。

欧米諸国はロシアをG7に加えるなど様々な優遇を行い「ロシアの欧州化」を図ったが、欧州の一員として埋没することを嫌ったプーチン政権は「ユーラシア主義」を掲げ、近隣諸国を従えて引き続き大国として君臨することを企んでいる。

《その4につづく》

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15:58  |  旧ソ連諸国  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2006.07.12 (Wed)

黒猫がウクライナのガス問題について語る② - 果たして、ロシアは悪なのか?

チェチェン・ゲリラの大物、バサーエフ司令官が死亡しました。
チェチェンをネタに一発記事を書いてやろうかと思ったのですが、こちらを終わらすほうが先です。ウクライナの組閣ネタとか書きたいことはたくさんあるのですが、次から次へと色々なことが起こりまして・・・。
そういうわけでタイミングのズレたネタが登場することもありますが、堪忍してください。


◆事件の経緯と決着
ロシアは、ウクライナに対して1,000立方メートル当たり50$でガスを供給してきたが、オレンジ革命によって親米のユーシェンコ政権ができると「もう特別扱いはしませんから、国際市場価格で買ってください」と迫り、2006年から230$に値上げすると通告した。国家再生のための大事な切り札を、自国の影響圏から離脱することを声高に宣言してる国に格安で売ってやる必要など、ロシアには全く無い。
しかし、だからといって「それじゃ他から買えばいい」で済むような代物ではない。

いきなり従来価格の4.6倍で購入を迫られたウクライナは「そんな大幅な値上げに急に応じられない」と当然反発し、交渉は決裂。
これを受けてロシアは2006年の元旦からウクライナへ向かうパイプラインのガス圧を20%下げた。20%圧力を下げたのは、このパイプラインを経由するガスの約2割がウクライナ国内で消費される分だから。このパイプラインはウクライナを経由してその先のEU諸国にもつながっているため、さすがに全面停止はできなかった。


しかし、この措置以後もウクライナは今までどおりロシアから送られてくるガスを消費したため、ドイツ、フランス、オーストリア、イタリアなどでガス供給量が20~40%低下する事態が起きた。EU諸国は、自身が消費する天然ガスの1/4をロシアに頼っており、EUへ輸出されるロシア産天然ガスの80%はウクライナを経由するパイプラインを使って送られている。
突然のガス供給量減少に悲鳴を上げたEUは、ロシアとウクライナに対し「お前らが喧嘩するのは勝手だが、我々にまで迷惑を掛けるな」と噛み付いた。

そこでロシアとウクライナは再び交渉を行い、新たに1,000立方メートル当たり95$で売買することで決着した。
この交渉では、ロシア産ガスはガスプロムの主張どおり1,000立方メートル当たり230$となったが、実際にウクライナへ供給されるガスにはトルクメニスタン産やカザフスタン産の安価なガスが混じっており、これらの価格は従来どおり50$前後に据え置かれたことからトータルでは1,000立方メートル当たり95$で落ち着いた。トルクメニスタンやカザフスタンは内陸国なので、ロシアのパイプラインを経由して天然ガスをウクライナやEU諸国へ輸出している。

こうして、ロシアvsウクライナのガス戦争は、国際市場価格での売買契約締結に成功したロシアの圧勝で終わった。ウクライナにとってはトルクメニスタンやカザフスタンが従来どおりの価格で提供してくれたことにより、値上げ幅が2倍で済んだのが不幸中の幸いである。


◆ロシアはそんなに悪者か?ウクライナは可哀想な被害者か?
この件に関する欧米諸国や日本のマスコミの報道は「生活に不可欠な資源を使って自分に逆らう国を締め上げたロシアは卑怯者」「逆らう国にこんな仕打ちをするロシアから石油やガスの安定供給は望めない」とロシアを悪者扱いする論調が目立つ。確かに、ここに来て突然急激な値上げを行ったのは嫌がらせ以外の何物でも無い。
しかし、ロシアだって慈善事業でガスや石油を売っているのではない。自国に敵対的な国に金や技術といった大事なものを気前良く提供するのは極東の平和ボケした島国くらいなもので、ロシアがそんなことをするわけがない。

しかし、ウクライナもやられっぱなしだったわけではない。
ロシアからウクライナに向かうパイプラインは2本あり、ウクライナ用とEU諸国用に分けられているという。だとすれば、ロシアが供給量を減らしたのは当然ウクライナ用のもの。にも関わらずEU諸国へのガス供給量が減少したということは、ウクライナが欧州向けのラインからガスを抜き取っていたとしか考えられない。これは立派な犯罪行為である。


ウクライナのユーシェンコ政権(と、それを支持する欧米のマスコミ)は、親ロシア派のクチマ政権が腐敗が酷かったことにかこつけ「腐敗=親クチマ派=親ロシア派=悪=ロシア」「ユーシェンコ=親欧米=民主的=善」というイメージを作り上げ、「ロシア=独裁的で横暴な大国 vs ウクライナ=自由を求めて大国の横暴と戦う健気な小国」という構図を演出した。
実際は、調べてみるとユーシェンコ本人も主要閣僚も脱税やら横領疑惑で全員真っ黒。オリガルヒという経済マフィアが跋扈していたエリツィン政権時代のロシアと何ら変わるところが無い。
国を食い物にして儲けることしか考えていない腐れマフィアが支配するウクライナと比較すると、前回述べたように国家再生に対する明確なヴィジョンを持つプーチン政権のほうが100倍マトモである。


今回の騒動は、オレンジ革命以来続くウクライナ国内の親欧米派と親ロシア派の権力闘争の続きであり、その背後にいるロシアとアメリカの覇権争いだ。
民主主義の歴史が浅いCIS諸国の選挙不正に付け込み、「民主主義」という誰も反対できない錦の御旗を掲げて親ロシア政権の国を次々と転覆させてきたアメリカと、自国の影響圏を死守しようとするロシアとの対立の一場面に過ぎない。

しかも、ロシアは国際市場価格での買い取りを要求しただけで、不当な価格での購入を強要したわけではない。ユーシェンコ政権がロシアの影響圏からの離脱を明言している以上、ウクライナがエネルギーの殆どをロシアに依存していることに付け込んで締め上げることも可能だったが、そんなことはしていない。ウクライナだけを敵視してガスの値段を吊り上げたわけではなく、同時期にモルドバやバルト三国に対しても値上げを通告している。
もちろん、親ロシアのルカシェンコ政権が続くベラルーシに対しては友好価格で供給を続けていることから、プーチンがガスを政治的に利用しなかったとは言わない。しかしながら、国際政治の舞台はいつの時代も非情なものだ。自国のエネルギー事情を考慮しないでロシアに喧嘩を売ったウクライナに非は無いのだろか。


話が逸れてしまったが、ウクライナの腐れぶりやCIS諸国を巡るアメリカとロシアの暗闘については後日改めて述べることとし、今回はガス問題に限って話を進めたい。

《その3につづく》

テーマ : 国際問題 - ジャンル : 政治・経済

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