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2007.05.13 (Sun)

【黒猫ポンセの野望】「HEARTS OF IRON II」リプレイ(その26)

これまでの経過はこちら
話が訳の分からない方向へどんどん進んで行き、ポンセの中の人は執筆に苦しんでおります。あまりに苦しいのでルーマニアヘ逃亡(本物語の元となるドイツでのプレイを放置して、ルーマニアでプレイして遊んでいた)しておりました。
この先、どうなるんでしょうねぇ・・・はぁ・・・。


◆ベンガルの虎、スバス・チャンドラ・ボース - 1941年4月のある日

バクーを発ったドイツ・インド軍集団がインドへの通り道となるイランを攻略していた4月のある日、ポテンテはローゼンベルクに呼び出され、東方占領省で一人のインド人に会った。

アルフレート・ローゼンベルク

やあ、カール。忙しい中、よく来てくれた。今日は君に会わせたい人物がいるのだ。
紹介しよう。彼がスバス・チャンドラ・ボースだ。

スバス・チャンドラ・ボース

これは驚いた。ゲルマン民族至上主義を掲げるナチ党にあなたのような有色人種・・・じゃなくて黒猫がいるとは。

カール・ポテンテ

ネ、ネ、ネタジ!ガンジーやネルーと並ぶインド独立運動の指導者じゃないですか!
お会いできて光栄です。私の場合は、毛が黒いのであって肌は黒くないですけどね。


「ネタジ」(指導者という意味)の敬称を持つスバス・チャンドラ・ボースは、ガンジーやネルーなどが集った独立組織『インド国民会議』で議長を務めた経験もある有名な独立運動家だ。しかし、ネタジの掲げる急進的かつ左翼的主張は穏健派のガンジーやネルーと対立し、彼は議長の辞任に追い込まれていた。
その後、イギリス当局による逮捕・自宅軟禁を経て、ネタジはインドを脱出。アフガニスタンからソ連を経てベルリンへやって来たのだった。

スバス・チャンドラ・ボース

私はガンジーやネルーと違ってバリバリの武闘派ですよ。自由や独立は自らの手で勝ち取るものだ。彼らのやり方ではインドが独立するのに100年かかる。

カール・ポテンテ

しかし、あなたはボリシェヴィキを賛美したことによってガンジーやネルーと対立し、「インド国民会議」を追い出された身。そのあなたがどうしてベルリンへ?

スバス・チャンドラ・ボース

ソ連があなた達ナチス・ドイツによって打ちのめされた今、もはやスターリンは頼れますまい。私はインドが自由を得るためなら、悪魔とだって手を組みますよ。

アルフレート・ローゼンベルク

ははは、私達は悪魔か。

スバス・チャンドラ・ボース

それは言葉のあやですよ。もちろん、ただで協力しろとは言いません。手土産にインド人旅団2,000人を率いて来ました。自由に使ってください。

アルフレート・ローゼンベルク

総統もリッベントロップも、ネタジと会おうとすらしないのだ。私が掛け合ったが、総統は「インドの独立など150年かかる」と言って全く相手にしてくれなかった。

スバス・チャンドラ・ボース

中東に展開しているドイツ軍がインドに到達するのは時間の問題だ。そしてあなた達は多分、難なくイギリス軍を追い払うだろう。しかし、私にも協力できることがあるはずだ。

カール・ポテンテ

確かに、あなたのほどの大物からの協力があれば、占領政策に何かと便利でしょうね。
しかし、ドイツがイギリスに代わってインドを植民地にしようとしたらどうします?

スバス・チャンドラ・ボース

ポテンテさん、私の目は節穴ではない。ドイツには、イギリスのように徹頭徹尾インドを支配する力は無いし、そもそもヒトラー総統にはそんなつもりは無い。

カール・ポテンテ

うーむ・・・さすがネタジ。我々の足元は見透かされている。

スバス・チャンドラ・ボース

もし、ドイツがイギリスと同じことをしようとすれば、その時は私は日本かアメリカの力を借りて再び戦うまでのこと。

アルフレート・ローゼンベルク

どうだい、カール。彼が率いるインドを見たいと思わないかね?

カール・ポテンテ

分かりました。総統を説得してみます。

総統官邸に戻ったポテンテがネタジの話を持ち出したところ、ヒトラー総統は露骨に嫌な顔をしたが、ポテンテはいずれインドを独立させる際にはその受け皿となる組織が必要であること、ネタジはその組織のリーダーとなるにふさわしい人物であることを力説した。
数日後、ポテンテとローゼンベルクのお膳立てによってネタジと面談した総統はすっかり彼の人柄に魅かれ、中東で捕虜にしたイギリス軍のインド人兵士を使って『インド国民軍』を設立し、それをネタジに与えるよう指示した。


その数ヵ月後、ポテンテは再びローゼンベルクに呼び出された。今度はイギリスから奪い取ったパレスチナやトランスヨルダンの取り扱いについてだった。

第1次世界大戦でオスマン・トルコを破ったイギリスは、オスマン帝国がアラブに持っていた土地を手に入れた。ところが、腹黒紳士イギリスは利害関係が絡む相手それぞれと矛盾する3つの約束を交わし、これがその後の混乱を生む火種となった。
まず最初に同盟国フランスと結んだ『サイクス=ピコ協定』で、手に入れた土地を英仏で山分けにすることを密約した。次にメッカの太守でアラブの名門ハーシム家の当主フセインと交わした『フセイン=マクマホン書簡』で、戦争が終わったらアラブ人統一国家を作ることと引き換えに第一次世界大戦への協力を取り付けた。そして最後が当時のイギリス外相アーサー・バルフォアがユダヤ系イギリス人資産家ウォルター・ロスチャイルド卿に宛てた書簡で述べた『バルフォア宣言』で、パレスチナにユダヤ人国家を建設することを約束した。

イギリスはこれらの約束によってフランスと共同歩調を取り、アラブの反トルコ勢力を援軍とし、ユダヤ人から資金援助を受けて第一次世界大戦を勝ち抜いた。ところが、イギリスは戦争が終わるとアラブ人とユダヤ人との約束を反故にし、シリアとレバノンをフランスをフランスに割譲したのを除き、残りの地域をイギリスの委任統治領として独り占めしてしまった。
もちろん、これではアラブ人が納得しないので、イギリスはフセイン・ハーシムの三男をファイサル1世としてイラク国王に就けて誤魔化した。

※史実では次男アブドラもヨルダン国王になっているが、ゲーム上ではヨルダンは存在せず。


その後、イギリスの委任統治下のパレスチナではシオニズム運動(聖地エルサレムにユダヤ人の故郷を作る運動)が本格化し、パレスチナ人から土地を買い取って移住するユダヤ人が増えると、土着のアラブ人(パレスチナ人)との衝突事件が頻発するようになった。アラブ人とユダヤ人の衝突に手を焼いたイギリスは、1937年にパレスチナをアラブ人国家とユダヤ人国家に分割する案「ピール分割案」を提示したが、両者から反発を食らって頓挫してしまった。
さらに、マホメット直系の子孫を自称するエルサレムの名門フセイニー家の当主モハメド・アミン・フセイニー率いる過激派「アラブ高級委員会」が、イギリス軍やユダヤ人を襲撃するようになったためパレスチナは大混乱に陥っていた。

ところが、あまりに派手に暴れすぎてイギリス軍に目をつけられたフセイニーは、中東にいられなくなりベルリンへと逃げて来たのだ。他でもない同志ローゼンベルクの頼みなので、ポテンテは渋々ながらもこのテロリストと面談した。

アミン・フセイニー 

イギリスの三枚舌外交によってパレスチナは混乱している。何とかして欲してくれ。

カール・ポテンテ

フセイン=マクマホン書簡もバルフォア宣言も無効ですよ。あれはイギリスがやったことで、我が国は無関係です。

アミン・フセイニー

では、ドイツはパレスチナをどうしたいのだ?それから、何故アラブの兄弟であるイラクを攻撃したのだ。前イラク国王ガジ1世(ファイサル1世の息子)は親独的な人物だったのに!

カール・ポテンテ

イラクはイギリスに付き従って、我が国とトルコに対して宣戦布告したのですよ。
攻撃されて当然ではありませんか?

アミン・フセイニー

アラブの土地はアラブ人のものだ!今すぐパレスチナからユダヤ人どもを追い出すのだ!

アルフレート・ローゼンベルク

そもそも、イラク国王の実家ハーシム家はアラブ人の統一国家建設を目指している。あなたが主張するパレスチナ単独の独立など認めていないが?フセイニーさん。

アミン・フセイニー

サウド家にメッカを追われたハーシム家など、どうなろうと知ったことではない!

カール・ポテンテ

だったら、その分家のイラクもどうなろうと知ったことではないのでは?いずれにせよ、我が国に対して何ひとつ協力していないあなたに指図を受ける筋合いは無い。

アミン・フセイニー

ぐぬぬぬ・・・。

※史実のガジ1世は1939年に事故死しているが、ゲームの世界では存命中。

第一次世界大戦が始まると、ハーシム家当主フセイン・ハーシムは「フセイン=マクマホン書簡」に従ってオスマン・トルコに対して反乱を起こし、1916年にメッカに「ヒジャーズ王国」を建国して独立を宣言した。さらに三男ファイサルはイギリス軍の情報将校トーマス・エドワード・ロレンス(アラビアのロレンス)の指揮の下、アラブ反乱軍を率いてシリアからトルコ軍を追い払い、ダマスカスに「アラブ臨時政府」を樹立した。
しかし、イギリスの裏切りによってアラブ臨時政府はフランスに叩き潰され、さらにヒジャーズ王国もリヤドを拠点とするサウド家率いる「ネジド王国」(後のサウジアラビア)によって攻め滅ぼされてしまった。

 カール・ポテンテ

フセイニーさん、どうして私があなた達に対して非協力的か分かりますか?

 アミン・フセイニー

それは我々がイスラム教徒だからだ!

 カール・ポテンテ

違いますよ。トルコ人もイスラム教徒だが、我々の同盟国です。

 アミン・フセイニー

それでは何故なのだ?!

 カール・ポテンテ

どの民族も民族自決に基づく統一国家建設のため、団結してこの厳しい時代を乗り切ろうとしています。インド人やユダヤ人とて例外では無い。しかし、あなた達アラブ人だけは違う。

 アミン・フセイニー

そ、そんなことは!

 カール・ポテンテ

ハーシム家が統一アラブ人国家を目指しているにも関わらず、サウジアラビアはそのハーシム家を攻撃してアラビア半島の大半を乗っ取り、そしてあなたはパレスチナ単独の独立を目指している。

 アミン・フセイニー

・・・・・・。

 カール・ポテンテ

イエメンやオマーンはあなた達の敵である連合国に加わっているし、内陸部は無数の土侯が群雄割拠している。アラブ人は団結せず、各人がそれぞれの思惑や野心に従って動いているではないか!我々はそのような相手は信用できないのです。

 アミン・フセイニー

くそっ!このアラブの敵め。覚えてろ!

 アルフレート・ローゼンベルク

カール、君は被抑圧民族に対して同情的な人物だと思っていたが・・・。
あれでは「アラブ人はユダヤ人にも劣る」と言っているようなものではないか。

カール・ポテンテ

アルフレートさんは「アラビアのロレンス」の話を知っていますか?

アルフレート・ローゼンベルク

いや、詳しくは知らないが。

カール・ポテンテ

あれを読めば、私の言ったことの意味が分かりますよ。


《つづく》

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2007.05.06 (Sun)

【黒猫ポンセの野望】「HEARTS OF IRON II」リプレイ(その25)

これまでの経過はこちら
ソ連を蹴散らしたドイツ軍は、中東と北アフリカへと向かいます。


インドへの道 - 1940年12月26日~1941年2月12日

聖夜に起こった元総統秘書官ニーナ・ゲーレンによる『カール・ポテンテ総統補佐官襲撃事件』から遡ること約3週間、12月上旬に中東・北アフリカ攻略作戦『クラフトヴェルク作戦』が本格的に動き出した。
12月1日には北方軍集団改め「ドイツ・アラブ軍集団」(司令官:ブロンベルク元帥)がレバノンへ上陸、12月6日にはバクー(現アゼルバイジャン共和国首都)に駐留していた中央軍集団改め「ドイツ・インド軍集団」(司令官:クルーゲ上級大将)がイラン領への侵攻を開始した。

インド軍集団は険しい山道に苦しながらも12月中旬にはラシュトとタブリーズを攻略し、首都テヘランの目前に迫った。山岳戦に向かない機甲部隊はタブリーズから山を降りてイラク領へと進み、年末には首都バグダッドの目前まで進軍した。
一方、アラブ軍集団主力部隊は順調にシリア、パレスチナ、ヨルダンの攻略を続け、12月26日には聖都エルサレムを占領した。


年が明けた1941年1月11日、フランス領ポリネシアに続き赤道アフリカ植民地が自由フランス加盟を表明した。欧州を追われ、未開の地ブラザヴィル(現コンゴ共和国首都)でくすぶるシャルル・ド・ゴール率いる自由フランス政府に到底未来があるとは思えないのだが、アフリカの民は露骨な人種差別政策を掲げるナチス・ドイツに従うヴィシー政権がよほど嫌いらしい。

1月24日、アラブ軍集団隷下のフェードア・フォン・ボック中将率いる第8軍がスエズを制圧。スエズ運河を失ったことによって、インドを拠点とするイギリス海軍は地中海を経由して欧州へ進出する術を断たれた。さらに2月10日にはベーメ少将の海兵隊がエジプトの地中海沿岸を全て制圧し、地中海沿岸にあるイギリスの植民地はマルタ島を除いて全て消滅した。
インドへ逃れて再起を図った大英帝国政府だったが、北を見ればシベリア軍集団はアフガニスタンのさらに北、トルクメニスタンにまで進出しており、西でもテヘランが包囲され、マンシュタイン中将の機甲軍団はペルシャ湾に到達しつつあった。このままイランを失えば、北部と西部からドイツ軍が雪崩れ込んで来ることになる。

頼みのアメリカは欧州大戦参戦に対して世論を統一できず、ドイツへの宣戦布告どころか「武器貸与法」を議会で否決され、連合国への軍事援助すらできない状況だった。起死回生の本土奪還作戦も失敗し、成す術が無いチャーチルにできることは、もはや神頼みだけとなっていた。


また、2月7日にキプロス島が「キプロス共和国」として独立した。ヒトラー総統は同盟国トルコの要請を受け、トルコ系キプロス人の独立運動家ファジル・キューズク博士を大統領に任命した。しかし、これにギリシャ系キプロス人が反発し、ヒトラーを驚かせた。
「何故だ?独立したというのに、奴らは何が気に入らないのだ?」

ギリシャ系住民に言わせれば、「トルコ野郎に支配されるくらいなら、イギリスの植民地のままのほうがよっぽどマシ」なのだそうだ。
両者の対立をここまで悪化させた原因は、イギリスの植民地政策に起因する。イギリスはどちらかに肩入れすることによって(キプロスの場合はトルコ系)意図的に対立を煽っておきながら、その一方で調停者を演じることによって不満の矛先が自分に向かないようにしていたのだ。これがイギリス得意の「二枚舌外交」である。

ヒトラー総統は渋い表情を浮かべ、蝿を追い払うような仕草をしながら言い放った。
「チャーチルの野郎をとっ捕まえたらキプロスに謝罪旅行に行かせるから、ギリシャ系住民にはそれまで静かにしているよう伝えておけ」



赤い巨星が落ちた日 - 1941年2月13日~5月8日

「ドイツ・シベリア軍集団」(司令官:ルントシュテット上級大将)は、-30℃を超える寒さと雪に苦しみながらもソ連領の中央部を突き進み、2月上旬には『ゼーベルティーガー作戦』の到達目標となっていたオムスク、ノヴォシビリスクなど西シベリアの工業地帯に迫っていた。
そして2月13日、後が無くなったソ連はついに講和を申し出てきた。

ミハイル・カリーニン

もはやこれまで。我々はもう十分戦った。
モロトフ君、ここに用意してある講和案を持ってヒトラーの元へ行ってくれ。

ヨシフ・スターリン

何を言うか、カリーニン同志!

ミハイル・カリーニン

スターリンよ、我々は負けたのだ。こうなってしまっては、ソ連という国家の存続が最優先だ。革命の灯を消してはならんのだ。

ヨシフ・スターリン

ソ連最高会議幹部会議長(名目上の国家元首)とは思えないその言葉!
これは重大な反逆であり、実に反革命的な発言だ。ベリヤ君、カリーニン同志をシベリアへ案内したまえ!

ラヴレンティ・ベリヤ

・・・・・・。

ヨシフ・スターリン

何をしているのだ!早くこのジジイをシベリア送りにしろ!

ミハイル・カリーニン

シベリアへ行くのはお前じゃ、スターリン。
シベリアで木を数える、シベリアで木を切る、シベリアで穴を掘る、シベリアで土を運ぶ、どれでも好きなものを選ぶがよい。

ヨシフ・スターリン

ベ、ベリヤ、お前まで私を裏切ったのか!

ラヴレンティ・ベリヤ

・・・申し訳ございません、閣下。

ヨシフ・スターリン

おのれ!貴様ら全員粛清だ!このトロツキストの豚どもめ!

ミハイル・カリーニン

衛兵!スターリン前書記長をシベリアのラーゲリ(強制収容所)にお連れしろ。

ヨシフ・スターリン

こ、こら!何をする!放せ!やらせはせん、やらせはせんぞ!
シベリアになど行ってたまるか!うぎゃー!ママ、助けて~!

こうして、残虐極まりない恐怖政治で北の赤い大国に君臨した暴君は失脚し、50年間の強制労働を課されてシベリア送りとなった。後任には人民委員会議副議長のラヴレンティ・ベリヤが任命された。
ナチ党高官の一部は共産主義の撲滅を訴えて戦争の継続を訴えたが、独ソ戦開戦から1年半を過ぎて国内世論は戦争に倦みはじめていた。ソ連全土を制圧するとなればさらにもう1年を要することから、ドイツ政府は講和に応じることにした。この講和によってウラル山脈以西はドイツに割譲され、両国は1942年8月までの不可侵条約を締結した。
また、同時にソ連はサハリンの北半分とカムチャッカ半島を日本へと割譲する羽目となり、太平洋へ進出する術を完全に失った。


その日の夜、ベルリンの総統官邸では盛大な祝勝パーティーが開催された。各戦線に赴いている将軍達の出席は叶わなかったものの、多くの人が詰め掛けて勝利の酒に酔いしれた。

アドルフ・ヒトラー

本日、ソ連が講和を申し出てきた。この講和条約によって共産主義者どもはウラル山脈の彼方に追いやられ、我々はロシアの大地を手に入れた。諸君、我々はついにやり遂げたのだ!

ルドルフ・ヘス

おめでとうございます、総統閣下。ナチズムの優位性が証明できて、私も嬉しい限りであります。

アドルフ・ヒトラー

うむ、しかし・・・かつての半分になったとはいえ、ソ連は未だイタリアを越える工業力を有している。一度は50個師団を切った赤軍も、これから1年半の間に必死に再建を試みるに違いない。

ヘルマン・ゲーリング

やはり、このまま攻め続けるべきだったのでは?

カール・ポテンテ

いや、パルチザンに悩まされて前線への補給もままならないことを考えれば、ここで手打ちにするのが得策かと。今回の講和によって東方占領地でのパルチザン活動は収まり、補給の遅滞は解消されました。

アドルフ・ヒトラー

しかし、不可侵条約の有効期間はたった18ヶ月間に過ぎない。いずれ、我々は再び赤軍と対峙することになるだろう。今回の講和は「終わりの始まり」に過ぎないのだ。

ヨアヒム・フォン・リッベントロップ

1942年夏までにインド攻略を終えておく必要がありますね。

アドルフ・ヒトラー

うむ、そうだな。それでは各人は引き続き自己の職務を全うしてくれたまえ。
ナチズムが世界を席巻するまで、あともう一歩だ。


ソ連を倒して勢いに乗るドイツ軍は2月23日にはヴィルヘルム・フォン・レープ中将の第9軍がテヘランを制圧。その後も順調に南下を続け、4月11日には南部の港湾都市バンダル・アッバースを占領。主要都市を全て失ったペルシャは併合されて消滅し、皇帝パーレヴィ2世はチャーチルを頼ってインドへと亡命した。
一方、イラクでも3月10日にホート中将率いる第13装甲軍が首都バグダッドを占領。3月14日にはマンシュタイン中将の第22装甲軍が南部の都市バスラを制圧。同日、イラクはドイツに併合されて消滅した。

レバノンに上陸したアラブ軍集団はパレスチナ、シナイ半島を経由してエジプトに展開していた。先乗りした海兵隊が既にカイロ、アレキサンドリアをはじめとする地中海沿岸部の占領を終えていたことからナイル川に沿って南下し、5月8日にはイギリス領スーダンのハルツームに到達した。


《つづく》

13:13  |  黒猫ポンセの野望  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2007.05.03 (Thu)

【黒猫ポンセの野望】「HEARTS OF IRON II」リプレイ(その24)

これまでの経過はこちら
GWだっつーのに、笹やぶの中を歩き回る羽目になって機嫌悪し・・・。


裏切りのクリスマス・キャロル - 1940年12月24日~25日(ぎ印ドイツ帝国暦2007年5月3日

Guicho Zurdoの元を飛び出し、自らの手による新たな歴史の構築を目論んでから5回目のクリスマス・イブ。ポテンテはこの日をベルリン市内にあるシャリテ大学病院で迎えた。
アホなことをしてGuicho Zurdo共々セーブデータを破損したことに怒った枠少尉はポテンテに殺人パンチをお見舞いし、哀れな黒猫補佐官は脳震盪を起こして病院へと担ぎ込まれたのだ。幸いなことに、顔が腫れあがった以外は異常は無く、夕方には退院して自宅へと戻った。

そしてこの日、アルメニア大統領オザニアスから送られた最上級のアルメニア・コニャックと、グルジア国王チヴェジェゼ2世から送られた高級キャビアがベルリンの総統官邸に届いた。ナチス・ドイツの属国たるアルメニアやグルジアにっとては、朝貢の一種といったところか。
これを知ったヒトラー総統は官邸で働く職員を集めてクリスマス・パーティーを開き、日頃の苦労をねぎらった。 出席者がコニャックとキャビアに舌鼓を打つ中、ポテンテ補佐官は会場の隅っこで隠れるようにビスケットを食べて過ごしていた。顔が腫れあがっているうえに、コニャックやキャビアのような高級品など飲み食いしたことが無い労働者階級出身の彼にとって、パーティーへの出席は苦痛以外の何物でもなかった。

コニャックやキャビアを見て目を輝かせている枠少尉を見たポテンテは、やがて誰にも気づかれないようにそっと会場を出た。総統の懐刀として恐れられる黒猫補佐官は、腫れあがってお岩さんのようになった顔の下に、その異名に似合わぬ穏やかな微笑を浮かべて自分の執務室へと向かった。
「彼女は護衛という任務のために普段から心の休まる暇が無い。しかも、私をぶっ飛ばしてしまってヘコんでいるに違いない。総統官邸の中なら刺客に襲われることもないだろうし、こんなときくらい息抜きさせてやらないとな。
さてと、インドへ逃げたチャーチルにどうやってトドメを刺すか考えるとしようか」


執務室へ戻ったポテンテは、書類や地図を机の上いっぱいに広げてはブツブツ呟きながら考えごとをしていた。時折、遠くから人々が談笑する声が聞こえてくる以外は物音ひとつしない空間で、彼はインド攻略作戦の素案を練っていた。
どのくらい時間が経っただろうか。集中力が落ちていることに気づいた彼は、ふーっと息を吐いて天井を見上げた。壁時計のコチコチという音に混じって、遠くからマイクに乗った総統のダミ声が聞こえてくる。どうやら、パーティーの閉会を告げる演説を行っているようだ。

「喉が渇いたな・・・」
コーヒーを入れるために席を立った瞬間、机の上に置いてある電話機のベルがけたたましく鳴った。
こんな時間に電話が来るとは、一体何事だ?訝しげな顔をしながらポテンテが受話器を取ると、電話の向こうから聞こえてきたのは凄まじい雑音だった。何だこりゃ?電話機の故障か?怪訝な顔をしながら耳を澄ませていると、やがてそのノイズはジミ・ヘンドリックスばりに歪みまくったギターの爆音であることが判明した。夜中に電話を掛けてきて爆音ギターを披露する人間といえば、思いつくのはあの男しかいない。しかし、いまいち確信が持てないポテンテは何も言わず、さらに注意深く様子を伺い続けた。

電話の向こうから聞こえてくるギターは不細工なクリスマス・キャロルを披露した後、やがて聞き覚えのあるメロディに変わった。これは・・・ドイツ国歌!電話の向こうにいる謎のギタリストは、こともあろうにドイツ国歌をジミヘン風に演奏しているのだ!何とバチ当たりな!
やはりあいつか!相手が何者か確信したポテンテは電話に向かって叫んだ。

カール・ポテンテ

何とバチ当たりな!
そういうことをして許されるのは、アメリカ国歌だけなんですよ、閣下!
Guicho Zurdoメリー・クリスマス。ご機嫌いかがかな?
アメリカ人のジミ・ヘンドリックスがアメリカ国歌を演奏したように、ドイツ人のワシがドイツ国歌を演奏しているのだ。何が悪い。

カール・ポテンテ

あなたはドイツ人じゃないでしょ!

Guicho Zurdo

ドイツはワシのものじゃ!ワシは事実上のドイツ皇帝じゃ!
そんなことよりも、どうじゃ?このギター、良い音じゃろ?

カール・ポテンテ

なんという凶悪な音ですか。ジ・エッジ(U2)やアンディ・サマーズ(THE POLICE)が好きな人とは思えない音ですが。

Guicho Zurdo

最近、「Big Muff」(本物のジミヘンも愛用したファズ・ボックス)を買っての。
ワシはジミヘンやリッチー・ブラックモア(DEEP PURPLE)も好きなんじゃ。クリアーな音でカッティングかますだけがワシではないのだ。

カール・ポテンテ

はいはい、分かりましたよ。
それで、今度は何の用ですか?

Guicho Zurdo

セーブデータを破損しおって。この馬鹿者。

カール・ポテンテ

あなただって間抜けな上書きでデータをスクラップにしたじゃありませんか!

Guicho Zurdo

お前がコンゴなんぞに行って遊び呆けているからじゃ。
<`Д´#>ウリは悪くないニダ!全部、お前のせいニダ!

カール・ポテンテ

朝鮮ネタは止めてください!私がこのゲームで日本を選ばなかった理由は、あの乞食半島が日本領、それも本国プロヴィンス(傀儡政権による独立が不可能な領土)扱いになっていたからなんですよ!

Guicho Zurdo

わーっはっは、相変わらず短気な猫じゃ。そんなに怒ってばかりいると、活性酸素が増えて早死にするぞ。

カール・ポテンテ

余計なお世話ですよ!

Guicho Zurdo

そんなことより、ポンセよ。探し物は見つかったのか?
ワシに大見得を切ったことを忘れたわけではあるまい。

カール・ポテンテ

既に、私はローゼンベルクやウラソフといった同志を見つけ、ウクライナやグルジア、アルメニアなどを解放しました。私は・・・今はまだはっきりとは分からないが、この戦争における新たな使命を見出しつつあるのです。

Guicho Zurdo

ふんっ、解放軍を気取って正義ヅラした偽善者め。チェコを併合したときのことを忘れたのか?所詮、貴様の手も血で汚れているのだ。

カール・ポテンテ

己の野望のために無用な戦争を起こすあなたと一緒にしないでくれ!

Guicho Zurdo

ポンセよ、お前は何者かに命を狙われているそうだな。相手がSSだろうがゲシュタポだろうが、ソ連が放った刺客だろうが、ワシにはどうでもいいことじゃ。
ワシが言いたいのはな、お前は嫌われておるということじゃ。

カール・ポテンテ

な、何ですか、唐突に。

Guicho Zurdo

正義や理想といった奇麗事ばかり語り、自分の手は汚さず、そして美味しいところだけを持ち逃げする。それがお前じゃ。
汚れ役となることを厭わないヒムラーやハイドリヒから嫌われるのは当然ではないか。

カール・ポテンテ

冗談ではない!彼らがユダヤ人やスラブ民族に対して行っている非道な仕打ちを、一体誰が許すというのですか!

Guicho Zurdo

戦争に善悪などない。皆が犯罪者ともいえるし、皆が犠牲者ともいえる。そして、勝者が正義となり、敗者が悪となるのだ。にもかかわらず、その勝利のために手を汚す覚悟の無いお前に、戦いに参加する資格は無いのだ。

カール・ポテンテ

そんなものは、あなたが自分の独裁を正当化するための詭弁だっ!

Guicho Zurdo

いずれ、ドイツ国民はあの絵描き崩れのキチガイ総統を見限り、お前を支持するかもしれない。ヒトラーに比べれば血の匂いがしないからな。しかし、それも束の間じゃ。どうせお前もすぐに血まみれになるのじゃ。
ポンセよ、よく聞け。民衆は、この荒れ狂った時代に自分達を導く救世主を求めている。しかし、自分は決してその救世主になろうとしないのが民衆じゃ。奴らにはそんな能力も覚悟も無いからの。それが民衆というものじゃ。

カール・ポテンテ

違う!あなたが社長椅子にふんぞり返ってわがままを言っていられるのも、全ては自分の人生を精一杯生きる民衆に支えられているからではないか!
Guicho Zurdoふんっ、お前は奴らの救世主になれるのか?救世主ヅラをした偽善者になるんだろうな?ワシはお前を見ているぞ。ぐわーっはっは。(ガチャン)


Guicho Zurdoとの電話を終えたポテンテは、憤懣やるかたないといった様子で苛立たしげに部屋の中を歩き回っていた。その歩みが6周目に入ったその時、ドアが軋む音ともに部屋に誰かが部屋に入ってきた。振り向いたポテンテの目に映ったのは、サンタクロースの衣装に身を包んだニーナ・ゲーレンその人であった。
「ニーナ、君だったのか。今日はとても可愛らしい格好をしているね」

まだ戦争が始まる前、ヒトラー総統がベルヒテスガーデンにいた頃には頻繁に会っていた二人だったが、その後多忙を極めるポテンテはフランス、イギリス、東部戦線、そしてウクライナやカフカスへと赴いてドイツを離れていることが多くなり、自然と二人の仲は疎遠になっていた。
ポテンテが病院に担ぎ込まれた際には見舞いに駆けつけたニーナだったが、慌しい状況で落ち着いて話ができるはずもなく、ポテンテが気がついたときには彼女はどこかへ消え去っていた。

「お見舞いに来てくれたんだってね。ありがとう」
ポテンテが礼を言うと、ニーナははにかんだような笑顔を浮かべ、そして何も言わずに手にしていた赤いポットを差し出した。その赤いポットに見覚えのあるポテンテは記憶の糸を手繰り寄せ、やがてそれがかつて自分が愛用していたものであったことを思い出した。あれは10月に自宅の水道が壊れた際、枠少尉が勝手に修理に来た水道屋にプレゼントしたものなのだ。枠少尉によれば、あの日家に来た水道屋はGuicho Zurdoの回し者だという。あの時、「補佐官、さっきの水道屋だけどね、あいつぎ印の回し者だよ」と言い放った枠少尉の言葉がポテンテの頭の中でグルグルと鳴り響いた。


「ニーナ、どうして君がそのポットを持っているのだ!まさか、君は!いや、そんな・・・」
驚愕の事実に直面して唖然とするポテンテだったが、それでも彼は湧き上がる疑念を必死になって打ち払おうと空しい抵抗を試みた。そんな彼の姿を見ても、ニーナは相変わらず微笑を浮かべたままで何も言わない。しかし、ポテンテの驚きに対する回答のつもりなのか、ポットの蓋を少し持ち上げてみせた。ニーナがポットの蓋を持ち上げると、唖然としているポテンテをあざ笑うかのように中から凄まじい勢いで水蒸気が噴き出してきた。水蒸気の発する熱気を浴びているにもかかわらず、彼の顔ははみるみるうちに青ざめていった。

グツグツポコポコという怪奇な音と水蒸気が執務室に立ち込める中、二人は暫し見つめ合った。 やがて、先に口を開いたのはニーナだった。

ニーナ・ゲーレン

ポテンテ補佐官、あなたの推察どおり、私はぎ印ドイツ帝国から送り込まれた密偵なのです。沸騰コーヒーのトラップを仕掛けたのも、水道屋のふりをしてあなたの家に潜入したのも、全ては私がやったこと・・・。

カール・ポテンテ

う、嘘だ!

ニーナ・ゲーレン

この赤いポットこそが何よりの証拠。あなたを騙すことになってしまいましたが、それも諜報の世界に生きる者の定め。許してくださいね。
それでも、これだけは信じてください。ポテンテ補佐官、あなたは私にとって憧れの人だったのです。あなたと過ごした日々、本当に楽しかった・・・。

カール・ポテンテ

そんな・・・どうして!

ニーナ・ゲーレン

今日はお別れを言いに来ました。あなたの身辺警護が厳しくなり、枠少尉によって私の正体を見抜かれた以上、もはや私はあなたの側にいることはできないのです。

カール・ポテンテ

ま、待ってくれ!行かないでくれ!

ニーナ・ゲーレン

さようなら、ポテンテさん。最後の思い出に、私が心を込めて入れたこの沸騰コーヒーを・・・。

信じられないことに、ポテンテは何かに吸い寄せられるようにしてニーナが持つ赤いポットへと向かって歩き始めた。ニーナへの親愛の情と、突如として突きつけられた別れが、ポテンテの判断力を狂わせていた。
「彼女の私に対する親愛を表現する唯一の方法がこの沸騰コーヒーならば、私は甘んじてそれを受け入れようではないか。たとえ、今後数日間、口がきけなくなろうとも・・・」


しかし、ポテンテが愛に殉ずる者のごとき悟りを開きかけた瞬間、一発の銃声が轟いた。パーティーを終えて戻ってきた枠少尉だった。
「そいつにだまされるな、補佐官!」

枠少尉がそういい終わらないうちに、彼女のルガーによって撃ち抜かれたポットから漏れ出した沸騰コーヒーはニーナの足元に散らばり、ニーナは小さな悲鳴を上げて後ずさりをした。しかし、ニーナはポテンテが知る「守ってあげたくなるようなか弱い女性」とは思えぬ身のこなしで物陰に隠れると、普段の彼女から想像もつかない殺気に満ちた声で叫んだ。

ニーナ・ゲーレン

あなたが・・・あなたさえ来なければ!
ポテンテ補佐官は私のものだったのに、あなたが邪魔したのよ!

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

(゚Д゚)ハァ?何を勘違いしているんだ?私がこいつの護衛をしているのは、それが任務だからだぞ。私は任務に忠実なドイツ人なのだ。

ニーナ・ゲーレン

嘘よ!嘘だわ!その無意味にデカい体型はロシア女に違いないわっ!

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

誰がロシア女じゃ!それに私には婚約者がいるのだ。沸騰コーヒーでヒィヒィ言ってる情けない黒猫と違って、炎と戦う勇敢な男(消防士)なんだぞ。

カール・ポテンテ

情けない黒猫で悪かったな!

ニーナ・ゲーレン

私の憧れのポテンテ補佐官をそのようにバカにするなんて・・・。許せないわっ!

やがて、銃声を聞きつけた警備兵が駆けつけると、ニーナは窓を突き破って外へ脱出し、目にも止まらぬ速さでどこかへ消え去った。
枠少尉は唖然として立ち尽くしているポテンテの側に駆け寄ると、彼が怪我をしていないのを確認した後、声を掛けた。
「危ないところだったな。私が目を離したばっかりに・・・。すまない」

しかし、ポテンテはそれには何も答えず、うつろな目をしたまま次のように呟くばかりだった。
「ニーナ・・・どうして・・・どうして・・・」


翌日、一度はソ連に併合されたものの、ドイツ軍によって解放されたエストニアの再独立が発表された。故郷エストニアの復活を喜ぶローゼンベルク東方占領相がポテンテ補佐官の元を訪れ、上機嫌な様子でしきりに何かを話していた。しかし、ポテンテは心ここにあらずといった感じで何も喋らず、寂しげな笑顔を浮かべるばかりだったという。


≪つづく≫

17:16  |  黒猫ポンセの野望  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2007.04.30 (Mon)

【黒猫ポンセの野望】「HEARTS OF IRON II」リプレイ(その23)

これまでの経過はこちら
二人揃ってセーブデータを壊してしまうとは、なんと間抜けなのでしょう。


キエフ宣言 - 1940年10月20日~11月8日

ポテンテと枠少尉が相変わらず口喧嘩(周りの人はこれを夫婦漫才と呼ぶ)を繰り返していた10月中旬、中東及び北アフリカ攻略作戦『クラフトヴェルク作戦』が発動された。先遣隊となったフランツ・ベーメ少将率いる海兵隊が10月27日にキプロス島へ、10月30日にはベイルートに上陸して中東への橋頭堡を確保した。
対するイギリス軍はルフトバッフェの激しい空爆に晒されて逃げ惑うばかりだった。

ベーメ少将がベイルートを確保したのを見たブロンベルク元帥率いるドイツ・アラブ軍集団が海路にて中東へ向かっていた11月6日、世界中を激震させるニュースが各国に伝えられた。
アメリカ大統領選において現職のフランクリン・ルーズベルトが落選したのだ。

アドルフ・ヒトラー

ポテンテ補佐官、良い知らせだ。ルーズベルトが落選したそうだ。
これでアメリカが欧州に介入してくる可能性は一段と低くなった。アメリカの助けを待ち望んでいたチャーチルやド・ゴールは今頃頭を抱えているだろう。

カール・ポテンテ

総統、油断は禁物です。新大統領のウェンデル・ウィルキーはルーズベルト以上の対ドイツ強硬派と聞いています。

アドルフ・ヒトラー

何だと?!

カール・ポテンテ

しかし、アメリカ国民は依然として欧州への介入を快く思っていません。国是である「モンロー主義(孤立主義政策)」を曲げることになりますからね。加えて、大統領になったばかりのウィルキーにはルーズベルトのような強固な政権基盤はまだありませんから、参戦に手間取ることは確実です。
仮に欧州へ介入してくるとしても、その時期は大幅に遅れるでしょう。

アドルフ・ヒトラー

よし、今のうちにイギリスとフランスを叩いてしまうのだ。インドとアフリカの攻略を全力で進めよ。

カール・ポテンテ

了解しました。

アドルフ・ヒトラー

ふはははは、ルーズベルト。哀れな男だ。我が国の台頭に危機感を覚えたものの、血を流す覚悟も無い堕落しきったアメリカ国民に裏切られたか。
海の向こうで指をくわえて見ているがよい。わーっはっは。

カール・ポテンテ

・・・・・・・・。
(いずれ、あなたもルーズベルトと同じ道を辿ることになるのですよ、総統閣下)


11月8日、「ローゼンベルク・ドクトリン」に従い『ウクライナ共和国』が独立した。ロシア(ソ連)から独立し、自分達の国を持つというウクライナ人の悲願はついに達成された。
大統領は先にドイツ軍に投降したばかりの元赤軍中将アンドレイ・ウラソフが就任することとなった。ウクライナ人は政権を任せられる受け皿となる独自組織(パルチザン等)を持っておらず、人選に苦慮したドイツ政府はウラソフに白羽の矢を立てたのだ。

首都キエフの中心街にある「カリーニン広場」は、この独立を記念して「独立広場」と改名された。そしてその広場で開かれた建国式典には総統の名代としてポテンテも出席していた。

カール・ポテンテ

ウラソフさん、大統領就任おめでとうございます!

アンドレイ・ヴラソフ

やぁ、ポテンテさん。よく来てくれました。
しかし、どうして私が大統領に・・・。私はウクライナ人ではないのに。

カール・ポテンテ

ウクライナは旧ソ連領で一番最初に独立を果たすことになる国です。つまり、この国はボリシェヴィキからの解放を象徴する存在となるのです。
その国の国家元首にふさわしい人は、あなたを置いて他にはいない。

アンドレイ・ヴラソフ

しかし、私に大統領が務まるだろうか・・・。

カール・ポテンテ

何を弱気なことを。あなたの願う世界を作るチャンスですよ。それに、あなたを信じてここまでついて来た多くの元赤軍兵士がいるではありませんか。

アンドレイ・ヴラソフ

・・・分かりました。全力を尽くしましょう。


独立広場に作られた特設の演説台にヴラソフ大統領が立った。背後に立つレーニン像の顔の部分には新しいウクライナ国旗が被せられており、首からぶら下げている看板には「謝罪します」と書かれている。スターリンが見たら激怒するに違いない演出だ。
やがてウラソフの演説が始まった。

「ウクライナ国民の皆さん!長年、ロシアやソ連によって虐げられてきたウクライナ人の悲願が、ウクライナ人国家を建国するという夢が今ここに実現しました!わたくしアンドレイ・ウラソフは、命を掛けて大統領としての責務をまっとうすることを誓います。
さて、まず最初に皆さんが感じている疑問にお答えしたい。何故、ロシア人である私がウクライナ人国家たるウクライナ共和国の大統領なのか。それはこの国が生まれた瞬間から持っている使命によるものなのです。

私はロシアで生まれた農民の息子であります。そして、農民に土地を、労働者により良き生活を、国民に輝かしい未来を約束する戦いのため赤軍に入隊し、以来20年以上に渡って赤軍に奉職してきました。私は、ボリシェヴィキの掲げる革命が、民衆に土地と自由と幸福を与えてくれると信じていたのです。
しかし、私はボリシェヴィズムに対する戦いの道に入り、すべての民衆に対して私と共に戦うよう呼びかけてきました。それは、何故なのか。私の呼びかけを聞いた人ならば、誰もが抱く疑問でしょう。そして、私はこの疑問に対して誠実に答える用意があります。

皆さん、ついこの間まで続いていたソ連政府による統治を思い出してください。ボリシェヴィキが勝利しても、ソ連人民は何ひとつとして手に入れることができなかったのです。私は、労働者がどれほどつらい生活を送っているのか、農民がどのようにして強制的にコルホーズに押しこめられたのか、数百万のソ連人民が不当な理由で逮捕され、ろくな裁判も行われずに死んでいったのかを見てきました。
さらに、スターリンとその取り巻きどもは大粛清によって赤軍を解体し、その赤軍はこの戦争において民衆に悲惨な犠牲を強いました。その戦いの中、私は、祖国という神聖なる仮面をかぶったボリシェヴィズムのために、どうしてこれほどの人民の血が流されなくてはならないのか、いつも自問せざるをえなかったのです!

そして、私はソ連人民がボリシェヴィキによって戦争に引き込まれたのは、スターリンの野心のためであり、自分たちには関係のないイギリスやアメリカの資本家たちの利益のためであると気づいたのです。スターリンは、イギリスとアメリカの利益を図ることで世界支配という自分の計画が実現できると考えていました。そして、この計画を実現させるためにソ連を戦争に引き入れ、我々に数多くの災禍をもたらしました。
これ以上血を流すのは犯罪ではないでしょうか!ボリシェヴィズムとスターリンは我々の敵なのです!誠実なスラブ人であれば、スターリンとその取り巻きに対する戦いに立ち上がることは、第一の聖なる義務ではないでしょうか!

ウクライナは旧ソ連領で一番最初に独立を果たしました。我が国はボリシェヴィキからの解放を象徴する存在であり、ボリシェヴィキからの解放において先駆けとなるべき存在なのです!
皆さん、我々がかつて同じソ連人として共に暮らした諸民族は今もボリシェヴィキの圧政に苦しんでいます。我々は誠実なるスラブ民族としてこの隣人達を助けるために立ち上がらなければなりません。これこそが私が大統領となった理由であり、私をこの世に生を受けた理由なのです!
ウクライナに真の自由を!そして我らの同胞にも真の自由を!今このときもボリシェヴィキの圧政に苦しむ同胞を救いましょう!」


独立という悲願を達成し、理想郷の実現に燃えるウクライナ人はこの演説に興奮し、会場には「ウクライナ!ウラソフ!」という大合唱が響いた。ウラソフ大統領のこの演説は『キエフ宣言』と命名され、ナチス・ドイツが誇るプロパガンダの天才ヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相の手によって「かつてのソ連国民であるウクライナ人自らが、他のソ連国民をボリシェヴィキの圧政から解放する」というプロパガンダとして徹底的に活用されることとなった。

壇上で拍手喝采を受けるウラソフの姿を見ながら、ポテンテはつぶやいた。
「見事ですよ、ウラソフさん。あなたならウクライナ人の幸せを実現できるでしょう。しかし、私にもまた成すべきことがあるのだ。そのためには、あなたも、そしてこのウクライナも利用させてもらいます。戦争は続く。あなたにはもうひと働きしてもらいますよ」

閣僚名簿を見ると、ウクライナで住民を殺しまくっていたナチスの将校エーリッヒ・コッホが何故か政府首班(首相)になっていた。ウクライナは、よほど人材が不足しているらしい。
独立とはいっても名ばかりで、実際はドイツの属国という扱いなのだ。ポテンテは見なかったことにした。



◆スクラップ&スクラップ - 1940年11月9日~12月23日(ぎ印ドイツ帝国暦2007年4月29日

11月28日、ウクライナに続いて『グルジア王国』が独立した。19世紀初頭にロシア帝国に併合されて滅亡した王国が、約140年ぶりに復活した。

※国家元首の名前が「アンドリー・チヴェジェゼ2世」でHRHの称号がついていることから、第一次世界大戦後にスペインに亡命したグルジア王家の人間と思われる。ゲームで使われている国旗は1918年から1920年まで存在した「グルジア共和国」のものだが、そういう理由で「グルジア王国」としておきます。


12月19日、グルジアに続いてアルメニアが『アルメニア民主共和国』として独立。第一次世界大戦でアルメニア義勇兵を率いてオスマン・トルコと戦った英雄アンドラニク・オザニアスが大統領兼首相(総統)に就任した。

アルメニア人の住む土地はロシア帝国とオスマン帝国によって分断されていたが、ロシア帝国が革命で転覆したことに乗じて、バルト三国やフィンランドなどと同様に1918年に独立を果たした。また、オスマン帝国も第一次世界大戦で敗北したことから、アナトリア地方東部(現在のトルコ東部)もアルメニア領となることが連合国によって約束された。ところがあまりに苛烈な仕打ちに危機感を覚えたケマル・アタトゥルク率いるアンカラ政府(後のトルコ共和国)はこれに激しく抵抗し、戦後のドサクサに紛れて進軍してきたギリシャ軍を返り討ちにすると、さらにソ連と同盟を結んでトルコを切り刻もうとする連合国を揺さぶった。
これに慌てた連合国は、より穏やかな内容の「ローザンヌ条約」を締結してトルコをなだめることとした。しかし、この条約によってアルメニア人の統一国家建設の約束は反故にされ、トルコとの密約によって進駐してきたソ連軍によって1920年にアルメニアは踏み潰されたのだった。
その後オザニアスはアメリカに亡命していたが、再びアルメニア人の民族自決を夢見て首都エレヴァンに舞い戻ってきた。アルメニア人にとっての富士山である「アララト山」はトルコ領のままであり、当初に約束されたものに比べると半分以下の面積しかない小国ではあったが、とにかくアルメニア人の国が復活した。
ポテンテとローゼンベルクはグルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの三国による「カフカス連邦」復活を目論んだが、この3ヶ国はお互いに仲が悪く、無理やり連邦制を導入しても1918年のときと同様に短期間で崩壊するのが目に見えていたことから諦めた。彼らには、バルト三国のように「同じ境遇に位置する者同士」として連帯する意識は皆無だったのだ。

※史実では、オザニアスは1927年に亡命先のアメリカで死亡しているのだが、何故かゲームに登場する。また、ロシア革命の混乱に乗じて独立を果たしたグルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの3ヶ国は1918年に「トランスコーカサス共和国連邦」を結成しているが、1年も経たないうちに空中分解して、1920年に3ヶ国ともソ連によって踏み潰されている。


12月23日、ウクライナ、グルジア、アルメニアの独立式典への出席を終えたポテンテは、約1ヶ月半ぶりにベルリンへ帰ってきた。
総統は、ベルリンを大ドイツの首都にふさわしい都市に改造する再開発計画「世界首都ゲルマニア計画」を進めており、ベルリン市内ではいたるところで工事が行われていた。官庁街からほど近い閑静な住宅街の一角にあるポテンテのアパートの前でも道路工事が行われており、行き交うダンプカーが巻き上げる埃が辺りに立ち込めていた。

帰宅したポテンテはコートと帽子についた埃を払うと、それを玄関のコートハンガーにかけて一息ついた。このコートハンガーは、総統お気に入りの建築家アルベルト・シュペーアのデザインによる特注品で、ポテンテのお気に入りの一品だった。
旅装を解きソファーに倒れこんだポテンテは、クッションの柔らかい感触を楽しみながら一言つぶやいた。
「やはり、我が家にいるときが一番安らぐ。これで私の後ろにそびえ立つエベレスト山がなければ最高なのだが」

次の瞬間、当番兵兼ボディガードを勤める枠少尉の強烈なパンチがポテンテの後頭部に炸裂した。少尉はソファーの上でうめき散らすポテンテを尻目に、部屋に妙なものが仕掛けられていないかどうか調べるために立ち去った。


やがて起き上がったポテンテはパソコンに向かい、『神の見えざる屁』を読んで「ぎ印ドイツ帝国」の動向をチェックしはじめた。最近の記事には、ギターを弾いて遊び呆けているGuicho Zurdoが参謀ゴルビ犬と交わした会話の様子が綴られていた。
「あの独裁者め。トロピコ放置国家編のリプレイも更新せず何をしているのかと思っていたら、ギターを弾いて遊び呆けていたか。読者を何だと思っているのだ」

ポテンテがいまいましげにつぶやいた次の瞬間、驚くべき一文が彼の目に飛び込んできた。

『何たることだ。何たることだ!何たることか!!黒猫ドイツ帝国はおろか、ぎ印ドイツ帝国までもがセーブデータをスクラップ&スクラップとは。馬鹿過ぎる。ダブルで馬鹿過ぎる』

どうやら、ポンセの中の人に続いてGuicho Zurdoもセーブデータを破損したらしい。ゴルビ犬の呆れた顔が目に浮かぶようだ。夢の「ゴルビスタン帝国」建国の夢が遠のいたゴルビ犬の嘆きに対して、Guicho Zurdoは悪びれもせずに次のように言い放った。

『いやね、エイリアン国家を出現させられるなんて聞いたもんだから、日付遡ってちょっとそれで遊んでみたんだな。挑んでは敗れ挑んでは敗れのいやー強いねえ、まではよかったんだが、その状態で最新データに上書きセーブしてしまっての…』

Guicho Zurdoも最初からゲームをやり直す羽目となり、現在着々とゲームを進めている最中だという。最初のプレイとは異なりイラクが枢軸に加わり、レバノンやシリアもドイツと友好関係にあるようだが、そんなことは些細な違いに過ぎない。
Guicho Zurdoは依然として世界征服を企んでおり、そのような些細な違いなどは彼の言うとおり「逝き着く先は変わらん。微妙になるのは日付けくらいじゃ」ということなのだろう。


背後に人の気配を感じたポテンテが振り向くと、そこにはいつものように枠少尉がそびえ立つエベレストのように仁王立ちしていた。ただし、いつもと違って修羅のような形相をしている。
その形相の凄まじさに耐え切れなくなったポテンテが目を逸らした次の瞬間、枠少尉の怒号が部屋に轟いた。
「これはどういうことなのか!今まで書き綴ったものは一体何だったのか!世界はお前らのおもちゃではないわ!二人とも何を考えているんじゃ。真面目にやらんか、この馬鹿者ーっ!」

ポテンテが最後に見たものは、自分の顔面に向かって飛んでくる拳だった。彼が次に目を開けたときに見えたものは、心配そうにこちらを覗き込む総統秘書官ニーナ・ゲーレンの顔であり、シャハト国防相に叱られてへこんでいる枠少尉であり、「シャリテ大学病院」と刺繍された白衣を着た看護婦の姿であった。


≪つづく≫

12:53  |  黒猫ポンセの野望  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2007.04.28 (Sat)

【黒猫ポンセの野望】「HEARTS OF IRON II」リプレイ(その22)

これまでの経過はこちら
新キャラ登場。か弱いポテンテを沸騰コーヒーから守る防人です。


荒野ポンセの用心棒 - 1940年10月19日

バルバロッサ作戦は大成功に終わり対ソ戦で勝利が見えたこと、そして新たに中東攻略作戦「クラフトヴェルク作戦」が発動されたことから、ヒトラー総統はヴォルフスシャンツェを引き払ってベルリンの総統官邸へと戻った。ポテンテ補佐官も総統に従ってベルリンへ戻ることとなった。

ベルリンに帰ってきた彼はその足で国防省へ向かい、ヒャルマー・シャハト国防相に面会した。以前にペテルブルクで受け取った電報について話をするためだ。久しぶりに見るシャハトは戦況が好転しているせいか以前よりも顔色が良く、元気そうな様子だった。
戦争が始まる前、ポテンテはこのドイツで最も経済に精通した政治家に師事していたことがあり、二人はいわば師と弟子とも言える間柄であった。しかしホスバッハ会議以降、シャハトは戦争も辞さない覚悟のポテンテに怒り、それ以降二人の仲は疎遠になっていた。

ヒャルマー・シャハト

おお、ポテンテ君。元気にしておったかね?
ホスバッハ会議以降、君とは疎遠になっていたが、君が東部戦線に送られたと聞いて、ずっと心配していたのだ。

カール・ポテンテ

とても有意義な旅でしたよ。先生もお元気そうでなによりです。
ところで、例の電報ですが。

ヒャルマー・シャハト

うむ、単刀直入に言おう。何者かが君の命を狙って不穏な動きをしている。

カール・ポテンテ

そんなことをするのは、ヒムラーかハイドリヒくらいしかいないでしょう?

ヒャルマー・シャハト

電報にはそのように書いたが、実はよく分からないのだ。国防軍防諜部(アプヴェール)を使って調べているが、未だに敵の正体が掴めない。

カール・ポテンテ

ほぉ。SSやSDではない可能性もある、と?
そこまで恨まれるような心当たりは、他にはありませんがねぇ。

ヒャルマー・シャハト

最近、おかしなことは無かったかね?

カール・ポテンテ

特にありませんねぇ。ゲシュタポの尾行はいつものことですし・・・。
あっ!そういえばグラスゴーで電話をしていたら、突然頭上から沸騰したコーヒーが降ってきて、大ヤケドをしたことがありましたが。

ヒャルマー・シャハト

沸騰したコーヒーが降ってきただと?まるでドリフのコントではないか。

カール・ポテンテ

先生、ドリフの場合は金ダライですよ。

ヒャルマー・シャハト

そんなことはどうでもよい!
いずれにせよ、君の警護を強化する必要がある。今まではアプヴェールのエージェントを君の護衛に付けていたが、より強力なボディガードを用意した。

カール・ポテンテ

これはこれは・・・。IV号戦車でも貸していただけるのかな?ははは。

ヒャルマー・シャハト

バカを言うな。国防軍の兵士じゃ。以前は衛生兵をやっておった。

カール・ポテンテ

衛生兵???それは私が撃たれた際の応急処置を考えてのことですか?
先生、そもそも撃たれないようにするのが護衛の役目・・・

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

衛生兵じゃ物足りないって言うのかい?
ゴチャゴチャ文句言ってると、アタシが今すぐこの場でアンタを三味線にするよ!

カール・ポテンテ

ぎゃー!

ヒャルマー・シャハト

紹介しよう。これからお前の護衛を担当するクルマン少尉じゃ。

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

アタシの名前はヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン、略してWAC。友達からは「枠」と呼ばれている。よろしくな、黒猫補佐官。

カール・ポテンテ

・・・・・・・。

ヒャルマー・シャハト

優秀な兵士であることは、この私が保証しよう。女性だからといってバカにしてはいかんぞ。彼女の格闘技は天下一品じゃ。ただし、口の悪さも天下一品じゃがな、ぐわーっはっは。

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

なんだい、その不満そうな顔は。アタシの腕を信用してないね?

カール・ポテンテ

・・・・・・してない。

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

ふんっ、これでもかい?
チェストォォーッ!(部屋の隅に飾ってあった銅像がパンチで粉々になる)

カール・ポテンテ

げっ!

ヒャルマー・シャハト

あーっ!私の大事なビスマルク閣下の銅像が・・・。
何てことをするんだ!お前ら二人とも今すぐ出て行け!


30分後、大事な銅像を壊されて激怒したシャハト先生に国防省を追い出された二人は、総統官邸へ向かってベルリンの官庁街を歩いていた。

カール・ポテンテ

・・・・・・・・。

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

どうしてそんなにブスッとしてるんだい?
そんなにアタシのことが気に入らないのかい?こんなに美しいのに。

カール・ポテンテ

自分で言うなよ・・・。
お前が余計なことをしたせいで、シャハト先生が怒ってしまったじゃないか。

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

アンタがアタシの腕を信用しないからだ。女だからってバカにするんじゃないよ。
アタシは鉄十字勲章を貰ったこともあるんだよ!

カール・ポテンテ

おい、そんなにくっつくな。もっと離れて歩けよ!
お前はどうしてそんなにデカいんだ?お前の隣にいると私が小さく見えるじゃないか!

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

離れて歩いたら護衛にならないだろ!
もっとも、殺されるのはアタシじゃないから、関係ないけどね。はっはっは。

カール・ポテンテ

本当に口の悪い女だな・・・。

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン

何か言ったかい?
あー、アタシには見えるよ。今夜、アンタが沸騰コーヒーのシャワーを浴びる姿が見えるよ。可哀想にねぇ。

カール・ポテンテ

ぐっ・・・。(私は貝になりたい・・・)



枠少尉がポテンテの当番兵兼ホディガードとなって以来、身長185cmの彼女は常にポテンテに影のように付き添い・・・いや、そびえ立つ山のようにポテンテの背後に仁王立ちし、風呂とトイレと寝るとき以外は片時も側を離れなかった。そして、二人は毎日欠かさず些細な理由で口喧嘩を繰り広げ、それは総統官邸の名物となりつつあった。
官邸の職員達はそんな二人の喧嘩が始まるたびに囁きあった。
「おい見ろよ、また夫婦漫才が始まったぞ」

そして、そんな二人の姿を見て、柱の影でハンカチを握り締めながら歯噛みする女性がいた。
「きぃーっ!許せない、許せないわ!私の憧れのポテンテ補佐官をあんな乱暴に扱うなんて!あの女は何なのよ!どうしてあんなに無意味にデカいのかしら?まるでロシア女のようだわ。そうよ、きっとあの女はロシア女に違いないわ。何よ、劣等民族のくせにっ!」

彼女のささくれ立った心は後に大きな事件を巻き起こすのだが、このときのポテンテにはそんなことを知る由も無かった。


《つづく》

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